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- KEIO SFC JOURNAL
- Vol.18 No.1
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「平成が生んだもの、残したもの」
小熊 英二 (慶應義塾大学総合政策学部教授) 琴坂 将広 (慶應義塾大学総合政策学部准教授) 内藤 泰宏 (慶應義塾大学環境情報学部准教授) 藤井 進也 (慶應義塾大学環境情報学部専任講師) 水野 大二郎 (慶應義塾大学環境情報学部准教授) 清水 唯一朗 (慶應義塾大学総合政策学部教授)
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平成の統治機構改革の回顧と展望
松井 孝治 (慶應義塾大学総合政策学部教授) 本稿においては、省庁別のボトムアップとコンセンサスの55年体制の政治が平成時代の政治改革によっていかに変革されたのかを回顧する。第一に平成前期の政治・行政改革を、第二に平成中期の小泉改革と民主党政権の統治機構改革の試みを、第三に安倍政権における官邸主導を、それぞれ分析、評価し、最終的に平成30年間の諸改革を踏まえて、将来の課題を検討する。
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日本外交と「価値」をめぐる展開 -「価値の外交」・「自由と繁栄の弧」を回顧して
神保 謙 (慶應義塾大学総合政策学部教授) 第一次安倍政権(2006年9月~2007年8月)は、麻生外相主導のもと「価値」を基軸とした新しい外交路線を推進した。「価値の外交」とその地理的展開である「自由と繁栄の弧」は、日本外交の新機軸として謳われたが、安倍政権交代後に同概念は事実上消滅した。「価値の外交」は日本のグローバルな関与の新しい論理の必要性、中国の台頭に伴う国際構造変化への対応、「戦後レジームからの脱却」という3つの側面から生み出されたが、対中政策の国際的潮流との乖離と国内の対中路線の齟齬を主たる原因として、日本外交に定着しなかった
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日本の市民社会の30年 -NPOの変遷を中心に
宮垣 元 (慶應義塾大学総合政策学部教授) 1989年を起点にすればおよそ30年、1995年を起点とすればもうすぐ25年になるが、この間の災害や紛争、社会課題の解決の場面で多くのNPO/NGO が一定の役割を果たしてきた。本稿の主たる目的はこうした日本のNPOの変遷を跡づけることにある。その主たるポイントは、ボランティア元年前後の連続性の発見と、元年後の質的変容である。この間、とくに新しい世代のNPOなどの事業志向が高まる一方で、自発的参加に減少傾向が見られている。NPOの持続可能性の追求が、かえってその可能性を損なう逆説がみられる。
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アントレプレナーにとって、平成はどのような時代だったのか
琴坂 将広 (慶應義塾大学総合政策学部准教授) 井上 大智 (慶應義塾大学総合政策学部4年) 熊本 大樹 (慶應義塾大学総合政策学部4年) 平成という時代には、企業の経営行為に影響を及ぼす様々な出来事が起きた。バブル崩壊、ライブドアショック、リーマンショック、東日本大震災などが企業の創業段階における資金・人材・販路の獲得に及ぼした影響は計り知れない。しかし、このような状況の中でも多くのスタートアップが日本から生まれ、それぞれの企業活動が日本の経済基盤を支えてきた。本稿では、日本のICTスタートアップに着目し、平成という時代における創業環境の変遷を紐解き、その未来を予測する。
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平成時代における参加型デザインリサーチの変容に関する分析 -社会福祉政策と共振する市民参加・包摂型デザインにおけるユーザの位相の変容を中心に
水野 大二郎 (慶應義塾大学環境情報学部准教授) 廣瀬 花衣 (慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程) 木許 宏美 (慶應義塾大学環境情報学部4年) 田中 堅大 (慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程) 平成時代におけるデザインリサーチの国際的な研究動向を振り返ってみると、ユーザの主体的な設計への参加に関する理論、手法研究へと移行しつつある傾向が見られる。そこで本論はデザインリサーチにおけるユーザの位相の 変容を参加型デザインとインクルーシブデザインの歴史的変遷を通して明らかにし、その上で、ユーザ参加・包摂型のデザインリサーチがイギリスと日本における社会福祉政策、特に障がい者就労支援の変遷とどのような共振関係にあるのかを明らかにする。
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生命の解明にみる科学と技術の往還
内藤 泰宏 (慶應義塾大学環境情報学部准教授) 自然科学による対象の解明は、対象を計測・制御する技術と表裏一体であり、 生命科学も例外ではない。19世紀に進化と遺伝に関する指導原理を手にした生命科学者たちは、20世紀半ばに遺伝情報を格納する媒体がDNAであることを突きとめた。それ以降、物理化学的手法を基盤に、生命システムを分子機械として解明する生命科学が急成長してきた。平成年間には、劇的な技術革新に伴い、分子レベルの膨大な生命情報が蓄積された。このデータが生命科学を新たなフェイズに導くことを期待する。
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平成時代:音楽と神経科学の邂逅
藤井 進也 (慶應義塾大学環境情報学部専任講師) 平成時代は、筆者にとって「音楽(Music)」と「神経科学(Neuroscience)」 とが邂逅した時代である。なぜ、音楽と神経科学の研究は、平成時代に飛躍的 に進展したのだろうか。本稿では、脳計測解析技術の進展と音楽家の脳、音楽 神経科学会議の開催とブラームス研究所の設立、音楽家の身体運動科学研究 の開拓、音楽リズム・拍子に関する神経科学研究の新展開、音楽の感動とグルー ヴ感の神経科学研究を取り上げつつ、1990年代、2000年代、2010年代の各 時代において、国内外でどのような音楽神経科学研究が世界を賑わせたのか、 各時代の重要文献をレビューし、平成時代の音楽神経科学研究について概説する。最後に、平成時代の音楽神経科学研究史を踏まえ、次の音楽神経科学研究について展望する。
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システムの研究に魅せられて -原点に立ち返り、さらなる先へ
徳田 英幸 (国立研究開発法人情報通信研究機構理事長/慶應義塾大学名誉教授) 本稿は、筆者の最終講義の内容をベースに、本特集号の趣旨を踏まえてICT進化の流れを概説したものである。特に、システムの研究開発を3つの時代、 すなわち、学生時代(1964-1982)、CMU時代(1983-1993)、KEIO-SFC時代(1990-2017)に分けて振り返るとともに、その時代で研究開発に関わったシステム基盤技術、それらを通じで学んだこと、大切なことを述べる。さらに、最後のセクションでは、これからの研究教育に関して、SFCにおける研究教育のあるべき姿について議論した。
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大学野球における監督の実践知の獲得に関する事例研究
林 卓史 (慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程) 本研究の目的は、大学野球における監督の采配に関して実践知を獲得し、そのプロセスを提示することである。本研究は、監督を務めた「私」がリーグ優勝を決定づける試合における采配について、内省とデータを用いて検証を行なった事例研究である。検証の結果、時間的制限が伴う状況における適正な采配には事前の周到な準備が重要であることが明らかになった。野球の監督は経験から学ぶ部分が多く、しかし個人の経験は限られており、本研究は監督の経験を補うという意味において意義のあるものである。
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リビアにおける「非統治空間」をめぐる問題とハイブリッド・ガバナンスの可能性
小林 周 (慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程) 本研究は、「非統治空間(Ungoverned Spaces)」という概念を手掛かりに、中央政府による統治の脆弱な地域におけるガバナンスのあり方を再検討した。 その上で、「非統治空間」では中央政府による独占的な統治が困難であり、非国家主体を組み込んだ「ハイブリッド・ガバナンス(Hybrid Governance)」の枠 組みが、紛争解決と治安の安定に有意義であると論じた。分析の事例として、2011年リビア内戦以降の北アフリカの政治と治安の流動化に焦点を当て、国家の統治がおよばない地域において発生する問題と、その解決のための非国家主体を取り込んだガバナンスの可能性を考察した。
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