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- KEIO SFC JOURNAL
- Vol.20 No.1
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スポーツ振興 × 身体運動科学
今泉 柔剛(独立行政法人日本スポーツ振興センター理事 新国立競技場設置本部長) 牛山 潤一(慶應義塾大学環境情報学部准教授)
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[研究論文]
SFCにおけるパラリンピック支援研究開発
仰木 裕嗣(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授) パラリンピック競技に対してこれまで進められてきた官学連携および産学連携の研究開発事例を紹介する。官学連携では、パラ水泳における視覚障がい水泳選手をサポートする無線骨伝導スピーカーゴーグルおよび壁接近検知装置を開発した。またパラトライアスロンではウェットスーツを開発し、リオデジャネイロパラリンピック大会で実際に用いられた。産学連携では、パラ陸上における車イスマラソン選手が使う3Dプリンター製グローブの開発を進めてきており、きたる東京パラリンピックに向けて現在も進行している。
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[研究論文]
オリンピックとスポーツアーカイブ -IOC の国際統治機構に基づくスポーツ資料の保存と継承のための制度論
町田 樹(慶應義塾大学環境情報学部非常勤講師) 本論文は、オリンピックやスポーツイベントをめぐって日々大量に生成される多種多様なスポーツ系資料(文書、映像、データベース、記念品等)のアーカイブの在り方を、IOCのグローバルガバナンスシステムに基づく制度論の観点から考察するものである。具体的には、デジタルアーカイブの四原則と言われる米国情報標準化機構(NISO)のガイドライン「コレクション」、「オブジェクト」、「メタデータ」、「イニシアチブ」に則って、オリンピックやスポーツ関連資料をめぐるアーカイブの「対象」、「目的」、「(保存)方法」、「主体」を検討していく。最終的に、本論文では以上の手続きを経て、スポーツ界においてアーカイブこそが第一に未来へと継承すべきレガシーとして認識されなければならないことを明らかにする。
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[研究論文]
運動競技がつくるランドスケープ
石川 初(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授) オリンピック・パラリンピック大会の開催は大規模な運動競技施設の建設を伴い、それらは都市スケールのランドスケープをつくる。それぞれの施設が大規模となる理由は、運動競技がそのルールとして要求する基盤環境の仕様にあり、それはその競技が成立した地域のランドスケープ、いわば「運動競技の原風景」を伴っていることがある。競技施設の巨大化は競技の原風景と開催地の既存環境との乖離において起きる。ひとつの都市という開催地から競技の場所を開放すれば、これとは異なるオリンピック・パラリンピックのランドスケープが生まれるだろう。
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[研究論文]
東京2020オリンピック・パラリンピックエンブレムの背後に隠された幾何学的な理
松川 昌平(慶應義塾大学環境情報学部准教授) 本論考では、筆者が作成したREG(Random Emblem Generator)というシステムの開発を通して、野老朝雄がデザインした東京2020オリンピック・パラリンピック・エンブレムの背後に隠された幾何学的な理を明らかにすることを試みる。
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[実践報告]
体操男子における選手強化戦略に関する考察
水鳥 寿思(慶應義塾大学総合政策学部専任講師) 本研究は体操男子上位国の強化戦略及び試合結果の分析及び評価を行うことで今後の体操競技における競技力向上に貢献することを目的として行った。世界で勝つためにはトップレベルのDスコアを高めたうえで、完成度を重視する戦略が有効であるといえる。上位5か国はクラブ中心の民主的体制と中央集権体制に分けられ、中央集権型のロシア、中国は競技人口が少ないなかでも高い競技力を有しており、効果的に強化を行っているといえる。日本はナショナルチームのリーダーシップを高め独自のハイブリッド型強化システムを構築していく必要がある。
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[実践報告]
英国代表チーム事前キャンプにおけるスポーツボランティア「KEIO 2020 project」の取り組み
稲見 崇孝(慶應義塾大学体育研究所専任講師) 福士 徳文(慶應義塾大学体育研究所専任講師) 東原 綾子(慶應義塾大学体育研究所助教) 永田 直也(慶應義塾大学体育研究所専任講師) 坂井 利彰(慶應義塾大学体育研究所准教授) 須田 芳正(慶應義塾大学体育研究所教授) 村松 憲(慶應義塾大学体育研究所教授) 村山 光義(慶應義塾大学体育研究所教授) 石手 靖(慶應義塾大学体育研究所教授) 小山 亜希子(慶應義塾女子高等学校教諭) 中川 一紀(慶應義塾普通部教諭) 慶應義塾大学(日吉キャンパス)は横浜市、川崎市とともに東京2020オリンピック・パラリンピックに出場する英国代表チームを受け入れる。本編では、その際に躍動する学生ボランティアを養成するための教育プログラム【KEIOスポーツレガシー】を実践する組織「KEIO 2020 project」の活動を紹介する。
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[総説・レビュー論文]
eスポーツという大いなる可能性
加藤 貴昭(慶應義塾大学環境情報学部准教授) 古谷 知之(慶應義塾大学総合政策学部教授) 南 政樹(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任講師) 近年急速な発展を遂げているeスポーツについて、社会的変革の歴史と未来のサイバーフィジカルシステムな世界からの視点、選手の知覚-認知スキル、ダイバーシティなヘルスケアの視点から論じる。特にSFCで開講されたe-Sports論の取り組みにも触れながら、それぞれの領域におけるeスポーツの秘めた可能性について展望を述べる。
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[総説・レビュー論文]
パラリンピックレガシーの長期的な継承-アトランタとバンクーバーからの示唆
北野 華子(NPO法人Being ALIVE Japan 理事長) 秋山 美紀(慶應義塾大学環境情報学部教授) パラリンピック東京大会が残そうとしているレガシーの一つがスポーツを通じた障害者の社会参加と共生社会の実現であるが、それをどのように実現していくのかという道筋は示されていない。本稿は、パラリンピックで残すべきレガシーを長期にわたり継承・発展させるための具体的な方策を、過去の成功例のケーススタディで検討する。1996年アトランタ夏季大会、2010年バンクーバー冬季大会で、それぞれレガシー継承を担った非営利組織の事例を検討したところ、両者ともに地域コミュニティに根差したプログラムを主軸に、活動の範囲を拡大していた。発展の鍵になっていたのは、多様な主体とのパートナーシップ形成による資金やマンパワー等の資源の活用であった。本邦においても、個人、組織、地域のエンパワメントを継続していくという視点が重要である。
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[総説・レビュー論文]
オリンピック・パラリンピックの意義・スポーツの価値の論じ方-有用性を超えたスポーツ政策研究の今後
鈴木 寛(慶應義塾大学総合政策学部教授) 2020東京オリンピック・パラリンピックが延期になった。改めて、その開催意義やスポーツの価値を論じるため、近代スポーツの歴史を概括し、招致の経緯、招致と密接に絡むスポーツ基本法制定の趣旨と見直しの方向を紹介する。今後、これらの意義や価値を論じる際には、有用性のみからではなく、卓越性・連帯といった内在的価値からも論じていくべきであり、そのためにも、スポーツ研究において、哲学と実証研究との協働可能性を開拓していく必要がある。例として、西田幾多郎、丸山眞男、サルトル、バタイユなど、哲学と連携したスポーツ研究の可能性を紹介する。
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[研究論文]
東アジア諸国の国内制度が地域統合に与える影響
メーサーロシュ・タマーシュ(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程) 近年の研究では、東アジアにおける自由貿易協定の貿易創出効果に対する疑問が報告されているため、地域の貿易に影響を与える他の要因を検証する必要がある。したがって、本稿では、各国の国内制度が東アジアの貿易へ与える影響について、重力モデルを用いて実証分析する。その結果は、国内制度が貿易へプラスの効果をもたらすことを示した。
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[総説・レビュー論文]
Safe Patient Handling and Movementに関する研究動向-計量書誌学的分析
渡邊 敏基(慶應義塾大学病院看護部) 山本 亜矢(慶應義塾大学看護医療学部専任講師) 本研究では、米国で発展してきた患者介助時の筋骨格系障害の予防を目的とした包括的プログラムである“Safe Patient Handling and Movement(SPHM)”に関する研究動向を調査した。SPHMに関する研究は、看護師の筋骨格系障害発症に伴う健康被害や社会的損失に関する実態調査や経済学的調査の後、リフト導入に関する費用対効果分析が実施され、国営機関およびその機関に所属する研究者が中心となり、プログラムの作成と実施および評価と改善を継続的に行っていた。わが国においても同様のプロセスでSPHMに関する研究を実施し、医療政策へ反映しやすいシステム構築を行う必要性が示唆された。
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[総説・レビュー論文]
わが国における看護師の腰痛予防対策に関する現状と課題-医療現場におけるノーリフトケアに焦点をあてて
小林 良子(慶應義塾大学看護医療学部助教) 宮脇 美保子(慶應義塾大学看護医療学部教授) 本稿では、わが国の医療現場における看護師の腰痛予防対策に関する現状と課題を検討した。腰痛予防対策の基本は、人による抱え上げは行わない「ノーリフトケア」であるが、諸外国と比較し、わが国における「ノーリフトケア」は普及しておらず、必要性は理解していても具体的な実効性を伴っていない現状がある。そうした背景には、物理的、経済的、人的問題等に伴う組織的な環境整備の難しさとともに、看護師が自身の健康問題として必要な声を発信できていないこと等があり、安全で安心できるケアを提供する上での喫緊の課題となっている。
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