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- Vol.19 No.2
多言語多文化共生社会に向けた挑戦
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巻頭言
新しい批判的多言語主義と多言語教育への含意‐SFC/慶應における実践から
杉原 由美(慶應義塾大学総合政策学部准教授) 藤田 護(慶應義塾大学環境情報学部専任講師)
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複言語主義にもとづく言語教育の改革‐英語が苦手な若者ではなく、異言語異文化に寛容な人を多数育てるために
平高 史也(慶應義塾大学総合政策学部教授) 本稿は、複言語主義の普及が異文化に対する見方を多様化し、日本社会を豊かにすることにつながり、次のような改革案によって、異文化間の相互理解に貢献する複言語話者が育成できることを主張する。 (1)小学校外国語活動を英語に限らず、「外国語」の活動とする。 (2)高校で「外国語概説」という授業を設置し、英語以外の言語の選択肢を拡大する。 (3)現在大学で行われている第2外国語の授業を高校で行う。 (4)大学では外国語を使って専門の研究を行う。 (5)母語継承語教育を公立学校で行う。
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「移動する子供たち」の言語保持-京都ドイツ語補習教室を事例として
馬場 わかな(慶應義塾大学総合政策学部専任講師) 「グローバル化」の進展に伴い、ヒト・モノ・カネ・情報の自由な移動は加速化し、その規模も拡大する中、国境を越えて移動する大人たちの背後には、彼らに随伴して「移動する子どもたち」が多数存在する。 本稿は、日本における「移動する子どもたち」やその親たちによる言語保持、とりわけ、空間的に移動した先で接触・習得した言語を保持するための試みについて、京都ドイツ語補習教室という事例から明らかにし、今後ますます増加するであろう「移動する子どもたち」のことばの教育を推進する上での課題を抽出した。
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中国における民族教育の現状‐東北3省における朝鮮族高校での調査から
髙木 丈也(慶應義塾大学総合政策学部専任講師) 本稿では中国東北3省における朝鮮族学校の現状報告を行う。分析結果、朝鮮族学校は依然として民族教育機関としての一側面を維持しながらも、中国の教育制度や大学入試制度、近年の社会変化の影響を多分に受けた学校運営を行っていることが明らかになった。また、少子化、漢族化、人口移動といった趨勢にあって、学校の財政・運営難、教員確保などの問題も顕在化しており、それはともすれば教育の質低下に繋がるものであるが、集住地域であれ散在地域であれ、各校なりの運営努力を行い、目下の状況を打開しようとしていることが明らかになった。
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アフリカ大陸北部におけるアラビア語の多様性
榮谷 温子(慶應義塾大学言語文化研究所非常勤講師) 本稿の目的は、北アフリカのアラビア語の多様性、ひいてはアラビア語話者の多様性を示すことにある。まず、アラビア語社会がダイグロシア(正則アラビア語と口語アラビア語)の状態にあることを説明し、さらに口語アラビア語にも、地域、識字レベル、性、宗教などの要因から多くの変種のあることを述べる。言語の多様性はその話者の多様性を意味するものである。アラブ世界はしばしば「イスラーム」や「アラブ」としてひとくくりにされるが、そこには多種多様な人々が暮らしている。
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日本の英語教育(ELT)における過去のネイティブスピーカー中心主義の変革
マティカイネン ティーナ (慶應義塾大学環境情報学部訪問講師(招聘) この論文では、学生向けのより現実的な言語ユーザーモデルの提供と強化、および世界の英語の現状をより厳密に反映する資料の使用の両方を通して、日本における英語教育 (ELT) の多様化の必要性について説明します。日本のELT 分野は、ネイティブスピーカーについての誤った原則に基づいて運営され続けています。これは、学生にとってネイティブスピーカー学習者への誤解を生み、学生の言語学習の進歩を妨げます。この論文ではまた、日本の高等教育の英語授業における過去のネイティブスピーカー中心主義を変革するための、実用的で教育的な方法を提案します。
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多様な日本語使用者を包摂するための言語的多数派への働きかけの検討 ‐大学講義の社会的インパクト評価
伴野 崇生 (慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任講師) 杉原 由美 (慶應義塾大学総合政策学部准教授) 本研究では筆者らが2019年度に行った「キャンパス内における言語文化的な壁の改善・解消を目指した講義」に焦点をあてて、社会的インパクト評価の観点から分析・考察を行った。その結果、キャンパス全体を多様な日本語使用者を包摂する環境にしていくための「理解・共感」「交流への意欲」「日本語による交流」の態度を普及させていく手がかりを得た。当該講義を30分という短い時間で効果的に実施するための改善点についても検討した。
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中国語内部の多様性とSFC中国語教育
嚴 馥 (慶應義塾大学総合政策学部専任講師) 中国語内部の多様性が現実である以上、SFC 中国語教育はそれを無視すべきではない。今後のSFC 中国語教育のデザインの土台として、本論文では海外研修プログラム(台湾)に参加したSFC 生を通じて得られた現状について考察した。中国語内部の多様性は学習に混乱を起こし、現地の人々と深く交流しない限り、自力的に多様性を感知し、人々の考え方を深く理解することが難しいことが分かった。初級の段階で中国語の多様性への意識を芽生えさせる研修前後のサポートが欠かせないと考えられる。今後、海外研修(北京)参加者と長期留学者も含めて更なる考察を進めたい。
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インドネシア語学習に関する日本人学生の見方
ペトルス アリ サントーソ (慶應義塾大学総合政策学部訪問教師) 野中 葉 (慶應義塾大学総合政策学部准教授) 外国語習得の成果に影響を与える学習者のビリーフと学習ストラテジーに関する研究は、これまで主に、外国語としての英語教育を対象に実施されてきており、外国語としてのインドネシア語学習における学生たちのビリーフに関する研究は、ほとんど行われてこなかった。本研究では、Horwitz が開発したBALLI を用いて、日本の大学でインドネシア語を学ぶ大学生268人を対象に、彼らの学習ビリーフを検証した。データの分析には、記述分析の他、因子分析などの多変量解析の手法を用いた。本研究の結果は、インドネシア語を学ぶ日本人学生の特徴を明らかにし、日本のおけるインドネシア語教育や学習の向上に寄与するものとなった。
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外国語学習における相互文化教育を通したリフレクションと批判精神の育成について
國枝 孝弘 (慶應義塾大学総合政策学部教授) 本稿は、相互文化学習を取り入れた外国語学習における、学習者のリフレクションと批判精神の育成の意義を、授業実践と学習者へのアンケートに基づいて考察した。学習者は、自文化と学習言語の文化の比較と、クラスの他の学習者との交流を通して、価値観や考え方の違いと類似に気づき、「自己」と「世界」の発見をする。だが世界の多様性を発見するだけでは、現状を肯定する相対主義にとどまる。その乗り越えのためには、自己のポジションを選び取り、その地点から世界の様々な出来事を判断できる批判精神の育成を重要視すべきと説いた
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SFCにおける多言語多文化社会構築に向けた、高大接続のスペイン語教育を目指して
小倉 麻由子 (慶應義塾大学総合政策学部非常勤講師) 今日のグローバル社会において十分な国際競争力を身につけるため、英語以外の外国語においても高大接続を推進する必要性がある。そのため、SFCのキャンパス内において、大学のスペイン語の授業と高等部のスペイン語の授業に関連性を持たせるべく、2018年度より、新たに高等部の授業にもCEFRに基づく授業計画を導入した。本論文では、日本の高等学校における英語以外の外国語教育の現状と合わせて新たな授業計画の実践状況について報告する。
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CALLからCILLへ ‐SFC英語から生まれたプロジェクト発信型英語プログラムを例に
木村 修平 (慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程) 本研究の目的は、知識基盤社会に対応したスキルを育成する言語教育の手法として、学習者と教師の双方が授業タスク遂行の基盤的ツールとしてICTを活用するComputer-Integrated Language Learning(CILL)という教授法を提唱し、CILL におけるタスクとICT との関係性をモデル化することにある。コンピュータを援用的なツールに位置づけるCALL と異なり、CILL は様々なICT を組み合わせて探究的、生産的なタスクを行うことを前提としており、プロジェクト型学習のようなアクティブ・ラーニングに対応しやすいという大きな利点がある。
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実験モデル生物としてのアフリカツメガエル
島田 香 (慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程) 原 佑介 (慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任講師) 黒田 裕樹 (慶應義塾大学環境情報学部准教授) アフリカツメガエル(学名:Xenopus laevis(ゼノパス レービス))は脊椎動物を代表する実験モデル生物のひとつである。脊椎動物において初となる体細胞クローンはアフリカツメガエルを用いて作成されており、その研究はノーベル医学生理学賞の授与対象にもなっている。それ以外にも発生生物学分野や再生医学分野、ならびにがん研究分野など、様々な研究において活躍している。本論文では、アフリカツメガエルが利用されるに至った歴史的な背景、飼育方法、様々な利用方法なども交え、アフリカツメガエルの実験モデル生物としての重要性を紹介する。
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他者の注視地点に対する観察者の相対的位置が視線方向知覚に及ぼす影響
森 将輝 (慶應義塾大学環境情報学部専任講師) 渡辺 利夫 (慶應義塾大学名誉教授) 本研究は、観察者と向かい合う他者の注視地点が観察者の前方あるいは後方に布置されている場合で視線方向知覚が異なるかを調べた。実験参加者32名は、顔写真を観察し、注視地点であると判断した地点に目印をつけた。視線知覚空間と物理空間の間にアフィン変換が当てはめられた。結果として、注視地点が観察者の前方にある場合よりも後方にある場合の方が、視線知覚空間は観察者と他者を結ぶ方向に狭く、異方性が大きいことが明らかになった。
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所得水準及び所得格差と1990-2015年の5歳未満児死亡率の改善状況の関連についての検証
藤屋 リカ (慶應義塾大学看護医療学部専任講師) 宮嶋 かおり (慶應義塾大学看護医療学部4年) 吉田 遥 (慶應義塾大学病院看護師) 稲垣 日菜子 (外務省国際協力局国際保健政策室専門員) ミレニアム開発目標(MDGs)が西暦2000年の国連ミレニアム・サミットで採択され、達成年である2015年に5歳未満児死亡率(U5MR)を1990年値の1/3にするという具体的な目標が設定された。保健分野の国際協力が進展し、U5MR は世界全体では半分以下に低下し偉大な成果と評価された。しかし、改善が十分でない国々もあった。2015年からは持続可能な開発目標(SDGs)が導入され、2030年にU5MR を出生1000件当たり25件以下にする目標が設定された。2015年のSDGs 開始時点で達成できていない国々を対象に、U5MR と所得水準および所得格差の関係について検証し、今後の対策および施策を検討する。【方法】世界銀行データベースから、U5MR、一人当たり国民総所得、所得格差を示すジニ係数を抽出し分析した。【結果】1990-2015年にU5MR が半分以下に低下しなかった国々は、低下した国々に比べて、所得水準が高く、また、所得格差が大きい傾向にあった。【考察】SDGs に掲げられたU5MR を25/1000出生以下にするという目標を全ての国・地域で達成するには、現在U5MR が高水準である低所得国に加えて、所得格差が大きい中所得国おいて、SDGs の理念に基づく包括的な施策を行うことが必要であることが示唆された。
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アイヌの散文説話(ウウェペケレ)における異類婚姻譚の再考証
本田 義矢 (株式会社セガゲームスエンタテインメントコンテンツ事業本部第4開発1部) 道南地方のアイヌの散文説話におけるカムイと人の婚姻譚、いわゆる異類婚姻譚においてと゛のような法則か゛働いているのかを、近年のアーカイブ公開の進展により利用可能となったものも含めた異類婚姻譚55 編を用いて分析し、従来の先行研究に対して新しい異類婚姻譚の視点、要素の指摘を試みる。従来の先行研究を検討し、その共通の見解に対する疑問と限界点について指摘し、異類婚姻譚に多様な要素か゛存在していることを検証する。さらに異類婚の考察から、神々と人間の関係か゛と゛のように築かれているかを分析する。
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ドイツにおける日本のデジタルゲーム受容 ‐異文化間に発生するゲームプレイの分析と考察
ステファン ブリュックナー (慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程) 倉林 修一 (株式会社Cygames 技術顧問/ Cygames Research 所長) 藁谷 郁美 (慶應義塾大学総合政策学部教授) デジタルゲーム市場の国際化が拡大しつつある一方、ゲームのセレクションやゲーム体験、評価には文化圏によって差異があり、特に東アジア- 欧米間で見られる違いは顕著である。本研究の目的は、ローカライズされた日本のデジタルゲームがドイツのユーザに受け入れられるその受容プロセスを探求する点にある。思考発話法を研究手法とし、ドイツの実験協力者2名に対し4種類のデジタルゲーム体験を実施した。収集・分析対象としたのは25時間以上のプレイデータである。本論では協力者のユーザ体験に干渉するゲームの要素を特定・考察する
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