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- Vol.14 No.2
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〈スポーツと慶應義塾〉 慶應義塾史に見るスポーツ
山内 慶太 (慶應義塾大学看護医療学部・大学院健康マネジメント研究科教授) 福澤先生は、「身体健康精神活発」の書幅が象徴するように、健康を重視し、自らも運動を熱心に行う人であった。それだけに慶應義塾は、草創期から塾生の健康と運動に留意して来たが、明治25 年に体育会を創立、各部は日本のスポーツの発展にも大いに貢献して来た。また、野球の早慶戦は日本のスポーツ文化と早慶両校の学生文化の醸成に大きな役割を果たして来た。慶應義塾のスポーツは、小泉信三ら社中の尽力によって守られ、発展して来たが、今日では、研究・教育機関なども拡充しており、その果たすべき役割は更に大きくなっている。
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〈スポーツと科学〉 エビデンス・ベースド・スポーツの時代
仰木 裕嗣 (慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科兼環境情報学部准教授) 21世紀に入って、オリンピック(五輪)競技をはじめとするスポーツ競技の審判行為に映像技術や、センサ技術が応用され始めている。これによってルールが変更され、テニスなどの競技においては、選手のプレースタイルにも影響がでてきている。センサ技術は近年の飛躍的な小型化や無線通信機能などの充実によってスポーツスキルの定量化にも貢献している。本稿では、こうした選手の行為、スキルなどを定量化する時代の流れを、エビデンス・ベースド・スポーツと名付け、エビデンス・ベースド・ジャッジメント、エビデンス・ベースド・スポーツコーチング、エビデンス・ベースド・スポーツトレーニングとい う側面からこれからのスポーツのあり方を未来予想するものである。2020 東京オリンピック(東京五輪)・パラリンピック(パラ五輪)では、センサ計測技術にくわえて、得られた身体運動スキルの膨大なデータから知識を導き出すことも考えられる。また、センサ計測技術、無線通信技術の飛躍的な発展によって競技のあり方も変わってくるであろう。こうしたテクノロジーが今後どのように発展して、選手やコーチ、さらには視聴者らに対しての未来予想を提供することが本稿の目的である。またこうしたテクノロジーが今後の高齢化社会において果たす役割についてもふれておく。
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知覚‐運動スキルから見るスポーツの熟練パフォーマンス
加藤 貴昭 (慶應義塾大学環境情報学部准教授) 熟練競技者は過酷な状況下においても適切に対処し、優れたパフォーマンスを発揮している。本稿の目的は熟練パフォーマンス研究における動向と理論的枠組みを概観し、スポーツにおける知覚- 運動の熟達化との関連について考察することである。まず、熟練競技者の優れた知覚- 運動スキルのメカニズムを探るための眼球運動測定手法を取り上げる。次に、記述的および帰納的にアプローチする熟練パフォーマンス研究に注目する。スポーツの熟達化に関する研究の寄与と熟練パフォーマンスアプローチとの関連を探りながら、今後について展望する。
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コーチングのジレンマ ‐勝利に向けたルールづくり
東海林 祐子 (慶應義塾大学総合政策学部専任講師) 金子 郁容 (慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授) 本論文ではスポーツにおけるコーチングについて、選手およびコーチが抱える複雑な心理的葛藤(ジレンマ)を考慮し、偶発的要素のあるゲームのなかで勝利するためのチームのルールづくりについて検討することを目的とした。選手間および選手と指導者間の心理的葛藤(ジレンマ)は、ゲーム理論の囚人のジレンマを援用して定式化することが可能であり、複雑な人間関係を整理し考慮したコーチングが可能となる。さらにコーチの権限が強く働くフォーマルルールと選手の相互作用からもたらされるインフォーマルルールを意図的に使い分けてチーム内のルールを作ることが大切である。
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〈スポーツと健康〉 けがをしない身体をつくるために
橋本 健史 (慶應義塾大学スポーツ医学研究センター准教授) 勝川 史憲 (慶應義塾大学スポーツ医学研究センター教授) 石田 浩之 (慶應義塾大学スポーツ医学研究センター准教授) 小熊 祐子 (慶應義塾大学スポーツ医学研究センター・大学院健康マネジメント研究科准教授) 真鍋 知宏 (慶應義塾大学スポーツ医学研究センター専任講師) スポーツ傷害予防のためのウォーミングアッププログラムは、その議論が始まったばかりであり、さらなる研究が待たれるフィールドである。今後は、本当に必要なプログラムの厳選とその科学的根拠、スポーツ種目による取捨選択方法、練習時間、頻度などの包括的プログラムの研究が必要である。われわれは現在、小型の加速度・角速度計を搭載したウェアラブル端末を開発中である。これは運動時にリアルタイムで自身の動作解析を行えるデバイスであり、フォームの確認やスポーツ傷害を起こしやすい動作の矯正に利用したいと考えている。
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身体活動と健康 -アクティブガイドを活用して
小熊 祐子 (慶應義塾大学スポーツ医学研究センター・大学院健康マネジメント研究科准教授) 身体活動は、健康上の効果が期待でき、また、不活動者が非常に多い現状を考えると、優先順位が高く促進すべき健康行動である。2013 年に厚生労働省が策定した「健康づくりのための身体活動基準2013」では、65 歳未満の成人では中等度以上の強度の身体活動を1 日合計で60 分以上、65 歳以上では、強度は気にせず1日合計で40 分以上という目安量を示している。「健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)」では、よりわかりやすいメッセージを提言している。アクティブガイドの活用法や藤沢市で実施中のコミュニティワイドキャンペーンについて紹介した。
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〈スポーツとコミュニティ〉 地域スポーツを支えるコミュニティの形成
松橋 崇史 (東京工科大学メディア学部助教) 地域スポーツが地域コミュニティの活性化に良い影響を与えるためには、地域スポーツが安定して展開する仕組みが重要である。本論では、その中でも、地域スポーツを主導する組織によって促される地域スポーツを支えるコミュニティの形成に焦点をあて、地域スポーツを支えるコミュニティの形成が、1) 地域スポーツ振興に必要な資源の調達を促す、2) 限られた施設や機会の有効利用を促す、という2つの側面から議論する。
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〈スポーツとビジネス〉 大学スポーツも企業スポーツも地域スポーツも、みんなスポーツビジネス
村林 裕 (慶應義塾大学総合政策学部教授) スポーツをするためにはお金がかかる。スポーツを観る価値、まちにスポーツがある価値が上がれば、負担者を増やすことができる。スポーツに関わる人はスポーツの価値を上げるために努力すべきで、車内で高齢の方に席を譲らずバッグで通路を妨げている行為がスポーツの価値を下げていることを知るべきである。 2020 年東京オリンピック・パラリンピックに向けて競技の強化は重要だ。同時に簡単に解決ができない課題を2020 年をきっかけに取組むことも大切である。中学生の部活、障害者のスポーツの環境を含む経済的な課題を解決させることすべてがスポーツビジネスの範疇と考える。
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太極拳によるフロー体験とSense of Coherence (SOC) の関係 -生きがい感と自己効力感を介して
飯田 健次 (慶應義塾大学SFC 研究所上席所員(訪問) 小熊 祐子 (慶應義塾大学スポーツ医学研究センター・大学院健康マネジメント研究科准教授) 本研究は太極拳における精神的健康効果について、生きがい感と自己効力感を介したフロー体験とSense of Coherence (SOC) の関係を明らかにすることを目的とした。質問紙調査で得られた、太極拳練習者453 名(平均年齢67.3 ± 8.6 歳)のデータを元に構造方程式モデリングを使用して解析した。結果として、太極拳をすることでフロー体験が高まり、フロー体験が生きがい感や自己効力感を高めて精神的健康感の指標ともいえるSOC に影響を与えていることが示唆された。また、フロー体験は太極拳歴が長いほど高まることが示唆された
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