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モビリティと社会インフラ

KEIO SFC JOURNAL Vol.7 No.2 モビリティと社会インフラ

2008.03 発行

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特集招待論文
  • 持続可能なモビリティと社会インフラ

    川嶋 弘尚 慶應義塾大学理工学部教授

    モビリティの将来を考える上で、環境への負荷低減を考えざるを得ない。このための技術は単に交通機関の技術開発だけではなく、社会の様々な仕組みを合わせて考察する必要がある。ITSの分野で実現しているICTと自動車交通の連携をさらに発展させ、持続可能なモビリティを達成するための仕組みを構築する際の課題を、国際標準という切り口と、主にICTの産業構造の観点から論ずる。さらに持続可能なモビリティを構築するための社会インフラの整備自身が、すでに国際的な技術開発競争の一端であること、そしてこれに関連した課題を論ずる。

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  • 21世紀型技術と電気自動車

    清水 浩 慶應義塾大学環境情報学部教授

    温暖化対策として電気自動車は大きな効果を持つ。これを実現するために、リチウムイオン電池、永久磁石モーター、高効率トランジスタが要素技術として欠かせない。これらは量子力学の知識を利用して発明され、21世紀に入って実用的に使用可能となった。これに加えて集積台車と名づけられた車体概念を用いると、加速感、広さ、乗り心地の面でガソリン自動車を越える。この技術を使ってEliicaと名づけられた電気自動車を開発した。さらに、この技術は自動運転技術と組み合わせることで、新しいコミュニティ形成に資することができる。

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  • ユニヴァーサル・トランスポーテイションとしてのLRTへの期待

    有澤 誠 慶應義塾大学環境情報学部教授

    自動車交通に依存した都市交通が抱える問題点の解決には、新世代型の路面電車LRTを活用した公共交通を含めた、マルティモーダルな交通体系をとるべきである。このことから、トランジットモールなどのコンパクトな都市設計にも光を当てることができる。欧米のいくつかの都市ではこうした方向に向かう動きが出ており、日本の地方中核都市についても同様な施策を進めるべきである。

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研究論文>
  • センタレスプローブ情報システムにおける情報伝達アルゴリズムの開発と評価

    石田 剛朗 慶應義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構助教
    佐藤 雅明 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科助教
    今池 正好 株式会社FEACインターナショナル代表取締役
    堀口 良太 株式会社アイ・トランスポート・ラボ代表取締役
    和田 光示 財団法人日本自動車研究所ITSセンター主席研究員
    植原 啓介 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科准教授
    村井 純 慶應義塾大学環境情報学部教授

    センタレスプローブは、車両同士が車車間通信を介してセンサデータを収集し、プローブ情報を自動的に生成/配信する自律分散協調型のプローブ情報システムである。本研究では、車車間の情報伝達に必要な情報伝達アルゴリズムを設計し、開発中のセンタレスプローブ情報システムの通信基盤機能として実装した。開発した情報伝達アルゴリズムの有意性を検証するため、東京都西部エリアの実際の交通流を再現し、センタレスプローブ導入期を想定した渋滞情報伝達のシミュレーションを行なった結果、開発した情報伝達アルゴリズムが渋滞情報の収集・生成において効果的に機能していることを確認した。

  • 朝鮮後期における書籍統制と民衆思想の関係についての一考察 西学及び東学の普及と統制を中心として

    尹 韓羅 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程

    朝鮮後期に登場した民衆思想である「西学」と「東学」に対して、当時の支配層は、これらの民衆思想が民衆運動を引き起こし、それが社会の変革につながることを防ぐために様々な統制を行った。本研究では、当時の史料に残されている事例記述などを手掛かりにして、朝鮮後期における書籍の発行・流通と統制の実態を明らかにすることで、当時の民衆思想の普及にとって書籍がどのような役割を果たしたのかを考察することにしたい。

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  • プラグマティズムの英語教育論的含意 R. Rortyの自文化中心主義・語彙論が示唆する新たな英語教育パラダイムの地平

    山中 司 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程/日本学術振興会特別研究員(DC2)

    英語教育が20世紀の終盤より大きな質的変貌を遂げつつある中、それに携わる全ての者は、工夫や効率化のみに視点を向けるべきではなく、そのパラダイム・シフトの可能性をも見据えた、根本的な議論を交わすべきである。本論文は新たな英語教育のパラダイムをプラグマティズムの観点から論じ、具体的な英語教育の理念とそのあり方を検討した。その際、R. Rorty の「希望の哲学」を英語教育論のコンテクストで捉え直し、自分の興味や関心に基づいたコンテンツを自らが発信する「プロジェクト発信型」の英語教育に新たな意義を認めた。

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  • デモクラシーにおける刑法上の正義 監獄制度に関するアレクシス・ド・トクヴィルの考察

    宮代 康丈 パリ第4大学(パリ・ソルボンヌ)博士課程(政治哲学・倫理学)

    刑法上の正義をデモクラシーのなかでどのように考えるか。自由主義の原理をどのように刑務所制度に適用するか。自由な社会と両立可能な法的制限をどのように構想するか。本稿では、これらの問題について、アレクシス・ド・トクヴィルの刑法哲学を問いの中心に据えて考察する。主要な論点は二つである。一つは、国家の中立性であり、もう一つは、制度改革としての分権化である。すなわち、刑法上の正義の領域に応用された法哲学・政治哲学について、歴史的側面を考慮しつつ、理論と実践の双方から考える。

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  • 動物園におけるユーザ参加型の展示デザイン

    大橋 裕太郎 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程
    小川 秀明 アーティスト、Ars Electronica Future Lab
    図子 泰三 株式会社エアリー代表取締役
    永田 周一 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程
    有澤 誠 慶應義塾大学環境情報学部教授

    本研究では、「来園者が参加できる動物園での展示デザイン」をテーマに、モバイル技術やネットワーク技術、映像や音声コンテンツなど複数のメディアやコンテンツを取り入れた展示デザインを実践した。具体的な試みとして、2007年4月26日から5月6日まで井の頭自然文化園にて「Being-いきてること展」と題した展覧会を開催した。この展覧会では、動物園においてこれまで一般的であった行動展示の考え方を拡張し、利用者が情報発信・情報共有することができる情報展示という概念を実践した。システムごとに行った利用者の主観評価では、肯定的判断をした回答者の偏りに有意な差を認めることができた。

  • テレビドラマの構造化と評価要因分析 自由回答文のテクスト解析による分析と解釈

    妹尾 紗恵 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程

    従来では考えられなかった規模のテクストをネットワークから獲得することが可能になった。本稿では、テレビドラマに関する大量の自由回答文を、分析的、かつ解釈的に解析するための解析フローを提案する。第一にtf・idfを用いて自由回答文を自動分類し、ドラマをクラスタリングすることにより、ドラマを分析的に構造化した。第二にTextImiとキーグラフを使ってドラマの構造を比較分析することにより、視聴者がドラマに求める要素を解釈的に抽出した。その結果から、視聴者のドラマに対する多様なニーズを明らかにした。

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研究ノート
  • 線形常微分方程式とフェルマ方程式

    西岡 啓二 慶應義塾大学環境情報学部教授

    種数>1の平面代数曲線の有理型関数による表現に関するピカールの定理の類似が証明される。命題は有理型関数に対してではなく、このノートで定義されるフックス拡大の要素に対して記述される。線形常微分方程式の解で生成される微分拡大はフックス拡大であり、この定理は系として、線形常微分方程式の解はフェルマ方程式を本質的に満足しないという結果を導く。

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  • 統合失調症患者における連想実験を用いた概念構造の評価の意義 単語数と概念間距離を用いた検討

    清野 絵 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程/日本学術振興会特別研究員

    本稿では統合失調症の認知機能研究に応用するため、連想実験によって統合失調症患者と健常者、既存の連想概念辞書の単語数と概念間距離の関連を検討し、その意義を考察した。研究の結果、単語数では統合失調症の記憶の概念構造が健常者と異なっている可能性が示唆された。また、3群の概念間距離は全群で有意な正の相関が見られた。