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総合政策学特別号

KEIO SFC JOURNAL Vol.7 No.1 総合政策学特別号

2007.12 発行

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特集招待論文
  • 一般認識学試論

    公文 俊平 多摩大学情報社会学研究所所長

    近年、個別科学の領域に囚われない自由領域科学としての「設計学」の追求が、さまざまなテーマをもって活発に行なわれるようになっている。しかし、設計学は認識学によって基礎づけられている必要がある。とりわけ、個別科学の領域を超えた「一般認識学」の確立と活用は、設計学の発展にとって不可欠とされよう。本稿では、「一般認識学」を「一般システム理論」と同一視する立場から、一般システムの四つの主要な形式(論理、物理、生体、社会システム)を区別した上で、もっとも一般的なシステムとしての「論理システム」の諸形式の体系的な提示を試みる。

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  • 総合政策学と「持続可能な福祉社会」の構想 政策統合への視座

    広井 良典 千葉大学法経学部教授

    従来の公共政策論は、一般的・抽象的な政策決定プロセス論か、特定の政策領域のみに関心を向けた個別政策論のいずれかに二極化する傾向があったが、今後は政策の内容に踏み込むと同時に異なる政策分野の関係やその統合という点に関心を向けた公共政策論そして総合政策論が求められている。本稿は、「持続可能な福祉社会」というコンセプトをベースに置き、特に「福祉・環境・経済」の統合という視点を中心にすえながら、総合政策ないし政策統合への一つの視点を提供することを試みる。

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研究論文
  • 退職後の日常と当事者のニーズ 藤沢市竹炭くらぶを事例として

    渡辺 大輔 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程/COE研究員(RA)

    藤沢市における「竹炭くらぶ」の事例分析を通して、当事者個々の生活の固有の文脈に注目しつつ、互いのニーズの充足を志向する実践とそのプロセスについて考察した。その結果、互いのニーズの充足を可能にしうる要素として、二点((1)互いを機能に還元せず、固有の存在として肯定し合うことを可能にする配慮の関係、(2)活動空間を自分たちの固有の空間とする「場」の構築と改編可能性)の重要性について指摘した。以上の知見を踏まえ、退職後の当事者へのエンパワーメントを可能にするガバナンスを考えるための基盤的視座を提供した。

  • 高齢者ケア従事者における上司部下面談の効果に関する研究 ソーシャル・サポートとコントロール増強の試み

    伴 英美子 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程/COE研究員(RA)

    上司部下面談が、高齢者ケア従事者のソーシャル・サポート、コントロール、ストレッサー、バーンアウトの認知に及ぼす効果を検証する。対象は医療療養病床のリハビリテーション室勤務の管理職1名、部下(前半群7名と後半群7名)である。上司に対してはコーチング研修(5時間25分)を、部下に対しては、仕事の振り返り、目標設定、問題意識についての上司との面談(30-45分)と、部門の意見交換会(40分)を実施した。事前中間事後テストの比較、面談満足度調査、グループインタビューより介入の効果を議論した。

  • 大都市郊外におけるコミュニティ・ケアの仕組みづくり 横浜市地域ケアプラザ地域交流事業の実態分析を通じて

    石井 大一朗 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程/COE研究員(RA)
    藤井 多希子 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特別研究講師

    大都市郊外において、結びつきの希薄な高齢者が生きがいを持って暮らせる地域づくりや、個々の身体的・内面的な変化を受け止め、適切なサービス資源へと結びつける顔の見える関係性づくりを基礎としたコミュニティ・ケアの仕組みづくりが求められている。本研究は、こうしたケアの仕組みづくりを早くから実施する横浜市地域ケアプラザ地域交流事業に着目している。地域交流事業の課題をアンケート調査と地域構造分析から、現在の仕組み上の難点について地域構造の多様性に着目して示した。また、インタビュー調査を通じて改善策を検討し、論者は学び合いや当事者参加の場づくりへの支援を軸としたコミュニティ・ケアの仕組みづくりを提起する。

  • 来るべき「欧州連邦」 その歴史性と現在

    中嶋 洋平 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程

    欧州統合の将来形態を巡っては連合を支持するフランスと連邦を支持するドイツが対立してきた。憲法条約が決議された現在、EUでは「諸国民国家の連邦」という将来像が現れている。欧州と諸国民国家が並立する連邦は、EU条約に市民権規定が盛り込まれ、欧州市民というステータスが誕生したことによって、実はすでにその輪郭を現している。法的・政治的ステータスたる市民が公民権を行使する欧州は法的・政治的領域であり、文化的領域たる諸国民国家と併存する。またこの欧州の姿はフランス的「ナシオン」理念を追求した先に見える。

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  • 冷戦後の日本の平和活動をめぐる政策・実施枠組みの変化 「安全保障」と「開発」の融合の視点

    長岡 佐知 ハーバード大学政治学部客員研究員

    冷戦後の日本の平和活動は、湾岸危機、カンボジア、東ティモール、アフガニスタン、イラクと各事例に対応する形で発展してきた。その変化を捉えるためには、政策決定だけではなく「実践」のプロセスを重視し、多様なアクター間の相互作用を分析する総合政策学のアプローチを導入する必要がある。そこで、本稿では新たな分析視角として、政策・実施レベルにおける「安全保障」と「開発」の融合の視点を提示し、日本の平和活動をめぐる変化を明らかにする。

  • 消費者への情報開示と企業間関係の変化 加工食品メーカーにおける情報開示の実態と評価を中心に

    小川 美香子 東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科助教
    梅嶋 真樹 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特別研究講師
    國領 二郎 慶應義塾大学総合政策学部教授

    筆者らの「食品トレーサビリティに関する調査」によると、多くの組織は消費者への情報開示の効果に懐疑的だった。一方、情報開示に積極的で、原材料供給業者と生産ノウハウの共有を始めたメーカーがあった。本稿では、調査結果を報告し、消費者への情報開示が企業間の情報開示を促すことで新たな企業間関係を導くという概念モデルを提示する。

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書評
  • 『総合政策学-問題発見・解決の方法と実践-』 大江守之・岡部光明・梅垣理郎編 慶應義塾大学出版会 刊(2006年)

    藤原 道夫 南山大学総合政策学部学部長・教授
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  • 『創発する社会』慶應SFC~DNP創発プロジェクトからのメッセージ 國領二郎(慶應義塾大学SFC研究所所長)編著 日経BP企画 刊(2006年11月)

    妹尾 堅一郎 東京大学国際・産学共同研究センター客員教授/特定非営利活動法人産学連携推進機構理事長
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