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- Vol.3 No.1
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近・現代数寄屋建築に関する考察 「数寄屋建築家」中村外二の作品分析を通して
澤田 和華子 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程 十九世紀後半の「近代」の幕開けには、既に日本建築の生産・流通体系は高度に規格化し、独自の近代的なシステムを確立していた。その後日本の建築界は、西洋の概念に拠る「建築」の領域の他に、伝統的な建築産業に依拠したもう一つの建築領域が存在する二重構造となる。「日本的なるもの」を執拗に追求した歴史的経緯、また「家元的構造」の成立によって、「数寄屋」という特定の伝統建築分野が華開いた。裏千家の出入り大工であり、「数寄屋建築家」と称された中村外二(1906-1997)の作品からその芸術の一面を明らかにする。
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モロッコ・フェス旧市街の保全再生政策の展開 「住むための遺産」政策と空間形成
松原 康介 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程/日本学術振興会特別研究員 モロッコの旧都フェスの旧市街は、1000年以上にわたって持続し成熟してきた歴史的都市である。旧市街は認知された遺産であるだけでなく、住民が実際に生活する都市であり、保全と同時にその住環境整備をも並行して行っていくことが不可欠である。本稿では旧市街の歴史的環境本来のあり方を参照しながら、フランス保護領時代以来の保全再生政策の展開を考察する。今日用いられる主要な手法は用途転換、街路形成、および住宅の再編成である。
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北東アフリカ地域における在来構法と土着材料の応用に関する研究 ジブチ都市部における日乾し煉瓦の活用に向けたスタディー
小草 牧子 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特別研究助手(非常勤) 北東アフリカ地域は、依然として人口増加にともなう住宅・施設不足が大きな問題となっている。乾燥地域という特異な気候条件にありながら、環境や土着性を無視した輸入材料、輸入構法に頼るか、スラムに見られる粗末な仮設住宅に頼るかといった状況の中で、経済性、効率性、耐久性をさらに重視した環境適応型建築構法を考察することが急がれている。よって本研究は、この地域の土着材料と在来構法に着目し、力学的・技術的視点から環境条件に合致した建材の最適化を試みるものである。
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タイ法システムに対するモン族の適応戦略
吉井 千周 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程 18世紀以降タイ北部に移住した山地民に対し、当初不干渉の姿勢を示していたタイ政府は、1950年代以降、山地民の活動に法的な制限を加えるようになる。その結果、山地民自身もまた、自らの伝統的な慣習を、タイの法制度に合わせて変えていくようになった。本論文では、タイ北部の白モン族の伝統的リーダーによる紛争解決の変化を通して、山地民がタイ国の法制度という新しい環境へと自らの紛争処理システムを適応させていった過程を明らかにする。
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国際環境保全の機能主義的パートナーシップ ドナウ川流域の事例を参考に
中林 啓修 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程 ドイツ南部に源流を発し、黒海へと流れるドナウ川は欧州を東西に流れるほぼ唯一の国際河川であり、その地理的な条件故に歴史上ドナウ川の利用は国際共同管理を基調に進められてきた。このドナウ川での、主に1990年代以降の環境保全の国際的な枠組みとしてはドナウ川保全国際委員会(ICPDR)とEUの水枠組み指令が挙げられるが、実際に発生した危機の事例では、枠組み間の対他期待に若干の齟齬が見られた。この解消にむけて論者は機能主義的なアプローチによるパートナーシップを提言する。
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都市環境モデリングのためのGISベース都市構成要素指標の開発
河端 瑞貴 東京大学空間情報科学研究センター機関研究員 フェレイラ・ジョセフ マサチューセッツ工科大学都市計画学部教授 本稿は、地理情報システム(GIS)ベースの都市構成要素指標を作成し、都市環境モデリングにおけるGISの応用法の一つを開発する。本研究は「都市の呼吸」調査を目的とするNASAの学際的プロジェクトの一部として行なった。米国ボストン市を対象に作成した都市構成要素指標は一つのグリッド・マトリックスに統合し、都市活動と大気汚染の関係のモデリングに利用した。グリッドベースの手法およびRDBMSと統計ソフトをGISに連結する手法の活用により、ここで開発したモデリングは柔軟で反復可能であり、他の都市にも容易に適応可能である。
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ネットワークコミュニティを基礎とした電子自治体デザイン
小林 隆 大和市情報政策課チーフ/慶應義塾大学環境情報学部非常勤講師 インターネットは、個人を公的空間に現すことを容易にした。個人は相互に共有できる価値観を背景として、ネットワークコミュニティを形成し、貢献主義に基づく地域社会活動を展開している。本研究は、コミュニティならびに公共性に関する論調を整理し、ネットワークコミュニティの形成と受容を電子自治体政策の基本方針として取り組んできた神奈川県大和市の社会実験を踏まえ、ネットワークコミュニティを基礎とした電子自治体デザインのあり方を示すことを目的とする。
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E-CELL Systemを用いたバクテリアの環境応答のシミュレーション
松崎 由理 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程 冨田 勝 慶應義塾大学環境情報学部教授 バクテリアの環境応答である「化学走性」を司るシグナル伝達経路のコンピュータモデルのライブラリを構築した。化学走性とは、環境中の特定の化学物質の濃度勾配に反応して泳いでいく現象のことで、鞭毛をもつ大腸菌などのバクテリアは、ある化学物質の量的変化を感知し、その環境情報を細胞内シグナル伝達経路を通して鞭毛に伝達し、泳動をコントロールする。化学走性の分子メカニズムについては現在までに多くの研究がなされ、理解が進んでいる。今回我々は、細胞シミュレーションのための汎用ソフトウェア「E-CELL System」を用い、過去に蓄積された知識を組み合わせることによって、この化学走性のシグナル伝達経路のシミュレーションモデルを実装した。そして反応経路の複雑さや計算方法を変えた複数のモデルを実装して挙動を比較した。「E-CELL System」は現在開発途中のシミュレーションシステムであるため、計算結果を汎用的な数値計算ソフトによる結果と比較し、「E-CELL System」の計算精度や計算効率がどの程度実用的であるかという点も考察した。また、これらのE-CELL モデルをWWW で公開した。
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条約の事後公布と国内実施 国際法の国内的妥当性を考える一側面として
山本 条太 慶應義塾大学総合政策学部教授(有期) 国際法と国内法との相互依存が強まる今日、条約の交渉から締結に到る一連の手続においても、国内法制上の要請を正確に把握し、条約との適切な接合を図る必要が増している。しかしこのような接合作業のあり方については、依然として個別の実務に委ねられ、理論的研究の対象とはされていない部分が多い。そこで本稿では条約の事後公布に伴う問題を題材とし、国際法学のみならず国内法学からの積極的貢献が期待される問題の所在を例示する。
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