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- Vol.4 No.1
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介護施設職員のストレッサーとバーンアウトの時系列的変化に関する事例研究 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)の事例
伴 英美子 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程 本調査では認知症対応型共同生活介護施設の職員の体験するストレッサーとバーンアウトの時系列的変化について検討した。1施設の職員約40名を対象に質問紙調査を3ヵ月毎に5回実施した。3回目と4回目の調査の間には組織体制変換があった。調査期間中一貫して体験頻度が高かったのは、仕事の「量的負荷」とそれに付随して生じる出来事であった。また、バーンアウトと有意な相関があったのは「役割曖昧」「役割葛藤」であった。組織体制変換後にはバーンアウトスコアと利用者の「過大なニーズ」に関連するストレッサーが有意に高まった。
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在宅介護を前提とした小規模コミュニティにおける情報流通と管理
内山 映子 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特別研究講師 宮川 祥子 慶應義塾大学看護医療学部助教授 本研究では在宅介護サービスの提供者、利用者相互の情報流通が不十分である問題に着目し、その阻害要因の分析に基づき、情報流通を円滑化するためのコミュニケーションモデルの提案と評価を行った。このモデルは、情報の透明性を高めるための水平型コミュニケーションモデル及びサービス利用者本人が主体的に情報流通を制御できるヒエラルキ型のアクセスコントロールモデルを組み合わせることにより、介護に必要なプライバシ情報の効率的な共有と、適正な保護を両立させるものである。このモデルの実用可能性を検証するために、プロトタイプシステムによる実証実験を行い、在宅介護コミュニティにおける情報流通の円滑化が、サービス提供の効率化と利用者の満足度の向上につながることを示唆する結果を得た。
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政府によるインターネット・コントロールとイスラーム 中東におけるインターネット・コントロールの現状と展望に関する一考察
山本 達也 慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問) 中東アラブ諸国で実施されている政府によるインターネット・コントロールをめぐっては、欧米の国際NGOや政府が批判を行っている。この点に関して、中東の各国政府は、インターネット上に存在するポルノ情報などイスラーム的に相応しくないコンテンツを遮断するために行うイスラーム的措置に過ぎないと反論する。しかしながら、イスラームの視点から分析すると政府の主張はイスラーム的妥当性に乏しいことが明らかとなる。妥当性が乏しいにもかかわらず、現体制によるイスラームのコントロールが機能しているため、政府によるイスラームの政治的利用は現在でも一定の有効性を保っており、国際的非難に対してイスラームを理由とした反論を続ける土壌は引き続き存在している。
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討論型世論調査の意義と社会的合意形成機能
柳瀬 昇 信州大学全学教育機構講師 慶應義塾大学総合政策学部非常勤講師 政治理論研究者フィシュキンらが提唱する「討論型世論調査」に、サンスティン、アッカーマン、レッシグらといった著名な公法理論研究者が、現在、大変注目している。本稿では、それぞれ独自の発展を遂げていたかに見えた公法理論としての討議民主主義と政治理論としての討議民主主義との接点となった、この討論型世論調査の概要やこれまでの実験における結果等を説明したうえで分析し、参加性、討議性、関心の強度、専門性及び代表性という5つの指標をもとに、合意形成のための制度としてのその有用性を検討した。
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電気自動車「KAZ」のコンセプト構築
ディルク,ファン,ゴッホ ゲント大学連合 ホ-グスクールゲント 建築学科 ファインアート 河上 清源 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特別研究助手 江本 聞夫 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特別研究講師 清水 浩 慶應義塾大学環境情報学部教授 今日の内燃機関自動車と電気自動車はその構造において大きな違いがある。電気自動車を内燃機関自動車の市場に導入するためには環境とエネルギーの問題が解決されることはもちろんのこと、高性能化と新しい利点の付加が求められる。本文では電気自動車とその利用対象者を分析する。新しい車輪配置、ドアとシートの配置及び内装と外観のデザインを行った。この結果をもとに高級車を目指した車のデザインを行い、クレイモデル、走行可能台車及び実車の試作を行った。この車では同一の長さの内燃機関自動車に比べて、室内空間を1.5倍長くすることができた。結果として600馬力の出力を持ち311km/hの最高速度を達成した8人乗り乗用車を実現した。
PD
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情報発信における知人情報を用いたプライバシ管理の実現
須子 善彦 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程 本研究の目的は、ユーザ間の知人関係を活用することでユーザの情報開示に関するリスクの低減を実現する情報配信モデルを実現することである。 (1) ユーザ間の知人関係という実社会上の資源をコミュニケーションツールにモデル化すること、及び、(2) そのモデル化においてユーザに対し情報開示における自主選択可能なオプションを提供すること、によって目的を実現する。また提案するモデルを、人材マッチングをユースケースとし、コストやスケーラビリティの点でユーザが広く利用可能なツールとして実装・実運用を通して有効性と課題を導き出した。
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Communities of Practice の組織内における進化と組織のサポートのあり方に関する研究
堀田 恵美 株式会社ヒューマンバリュー 研究員 坂田 哲人 慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問) 長沢 健太郎 株式会社ガリバーインターナショナル 企業経営が変化し、グループやチームを主体とした組織編成の中では、そのグループやチームのアクティビティを効率的かつ効果的にしていくことが多くの企業における課題となっている。その中でも、Communities of Practiceという組織形態が注目されている。あくまでも人的なネットワークを前提に形成されるものであり、動的・有機的に変化しながら進化する形態である。組織では、COPの動態的な変化のプロセスを人的ネットワークの動的な変化、組織にとっての意味合いからみた発展の両側面から捉え、活用していくことがポイントとなる。本研究は、Communities of Practiceの組織内でのダイナミックな進化・発展と、その活動やプロセスを支える組織サポートに関する調査研究を行っている。そのことで、今後、より効果的に組織がCOPのようなチーム形態を活用するための方法論を探ることを目指している。
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企業における社員行動変容のためのIT環境
鈴木 智之 エム・アイ・アソシエイツ株式会社経営企画部長 企業における社員の創造性向上のためのIT環境は従来グループウェアなどのツール導入に主眼が置かれていた。しかしながら、学習理論とIT手法の活用の関連を捉え直すことで、状況学習理論の可能性がITによって拡大されてきており、具体的にはEラーニング、Communities of Practiceの展開により企業における社員の創造性が大幅に向上する効果を期待できる。但し、現状の企業におけるIT活用はその可能性を十分に活かしきれていない。本稿ではその原因と今後の方向性に関して、具体的事例をもとに検討することとする。