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コミュニケーション論のひろがり

KEIO SFC JOURNAL Vol.2 No.1 コミュニケーション論のひろがり

2003.03 発行

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招待解説論文
  • コミュニケーションとインタラクション

    安村 通晃 慶應義塾大学環境情報学部教授

    コミュニケーションは本来人間同士の間のものであるが、メディアや機械との間まで広げて考えると、ヒューマンインタフェースやインタラクションとの係わりは避けては通れない。そこで、ここでヒューマンインタフェースの立場からコミュニケーションについて述べる。まずコミュニケーションの3つのモデルを取り上げ、次に、コミュニケーションにおける理解とは何かについて論ずる。さらにコミュニケーションの特性として、状況依存性、引き込み現象、マルチモーダルやノンバーバル性などを取り上げる。続いてメディアとコミュニケーションに関して、メディアの特徴の違いや顔文字、遠隔コミュニケーション、さらには温もりコミュニケーションなどの話題を紹介する。最後に障害者とコミュニケーションの関係について述べる。

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  • 意味づけ論からソシオセマンティクスへの歩み -SFCにおける新しい言語コミュニケーション論の展開

    深谷 昌弘 慶應義塾大学総合政策学部教授

    ソシオセマンティクスという新しい学問の創業について、私と田中茂範氏(環境情報学部教授)が協働で進めてきた「人々にとっての意味とその社会的編成を取り扱う言語コミュニケーション論」の開発を軸にして記す。新しいパラダイムとコンピュータによるテクスト分析システムによって人々の意味世界に関する研究が可能になってきた。ネットワークの社会への浸透とソシオセマンティクスの発展で、社会研究は人々の意味世界に踏み込んだ新しい地平を拓いていくだろう。

特集論文
  • 看護理論と対人コミュニケーション

    杉本 なおみ 慶應義塾大学看護医療学部助教授

    看護学とコミュニケーション学は共に人間のコミュニケーションに大きな関心を寄せる学問領域である。しかしながら両者が相互に理論形成上の影響を与えた形跡はほとんど見られない。そこで本稿では、コミュニケーションの位置づけという観点から25の主要看護理論の分類を行う。次に、対人コミュニケーション領域において広く受容されている前提との整合性という観点から、これらの看護理論におけるコミュニケーションの扱いを概観する。コミュニケーションを「看護の道具」と捉えることの多い看護理論においては、その過程ではなく目的からコミュニケーションを定義する傾向が見られること、その結果コミュニケーションに関する根源的理解が阻まれる可能性があること、の2点が、看護学・コミュニケーション学双方の特殊性を踏まえながら論じられる。

  • 音読困難者の眼球運動特性に基づく新しい読字モデル

    Kwok, Misa Grace 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程
    石崎 俊 慶應義塾大学環境情報学部教授
    福田 忠彦 慶應義塾大学環境情報学部教授

    音読時における眼球運動特性を明らかにし、表記文字コミュニケーションの基礎である「読字モデル」を構築した。表記属性を統一した課題語を用い、失読症患者と健常者の読字実験を行い音読時間と眼球運動を測定した。その結果、健常者は周辺視により単語をchunkとして認識する傾向にあるのに対し、失読症患者は音読困難な場合に、中心視による逐次読みが発生することが分かった。眼球運動と音読時の発話解析より、従来の二重回路モデルやトライアングル・モデルとは異なった言語処理プロセスの存在が示唆された。

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  • プログラミング言語としての日本語

    岡田 健 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程
    中鉢 欣秀 慶應義塾大学SFC研究所所員(訪問)
    鈴木 弘 東京都立航空工業高等専門学校助教授
    大岩 元 慶應義塾大学環境情報学部教授

    正しく表記された日本語をプログラミング言語として用いることについて、語順と情報処理の効率の観点から議論する。日本語をプログラミング言語として用いると、文法教育を必要としないために、日本人に対するプログラミング入門教育ではプログラムの表現能力の育成に集中できる。Javaの実行環境である仮想計算機のアセンブラは日本語に容易に変換可能である。このことを用いて、アセンブラから高級言語までを日本語を用いてシームレスに表現できるプログラミング言語「言霊」を開発した。この言語は、細かい処理を記述できるため、熟練プログラマのための言語としても、有効性が期待できる。

自由論題論文
  • 両眼立体視における奥行き知覚の幾何学的性質と奥行きの復元性について

    渡辺 利夫 慶應義塾大学環境情報学部教授
    西岡 啓二 慶應義塾大学環境情報学部教授

    両眼立体視は、もとの物理的空間の奥行きをどれくらい正確に復元しているのであろうか。物理的奥行きが3m以内の空間に置かれた対象までの距離と角度を両眼立体視条件で観察した場合と、直接観察した場合を比較して、両眼立体視空間の幾何学的性質および両眼立体視の復元性を調べた。結果として、両眼立体視空間は、距離に関しては直接観察した場合とほぼ同じであったが、角度に関しては、直接知覚の場合とは異なることが見出された。また、両眼立体視空間は、視空間の幾何学的性質と同様に空間の異方性があることが見出された。

  • 持家住宅投資に関する日米比較分析

    白石 憲一 慶應義塾大学総合政策学部非常勤講師

    本論文は、日・米の家計による持家住宅投資の決定要因を実証的に明らかにすることを目的とする。データの種類、諸変数の測定尺度、推定期間、需要関数形を日・米で統一して、持家住宅投資を分析する点に、既存研究に見られない特徴がある。  分析の結果、帰属家賃のシェアーは、一部の年を除いて日本の方がアメリカよりも高い。その重要な要因として、日・米の家計の選好場の違いを反映して、日本の方がアメリカよりも帰属家賃の所得弾性値が高く、価格弾性値の絶対値が低い点が解明された。

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  • 電気自動車を高機能化する新しいサスペンションシステム -8輪タンデムホイールサスペンションの提案と開発

    大西 将浩 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程
    河上 清源 科学技術振興事業団技術員
    柿崎 勇晃 科学技術振興事業団研究補助員
    松ヶ浦 史郎 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程
    清水 浩 慶應義塾大学環境情報学部教授

    電気自動車の設計自由度の高さを生かし、その空間効率・乗り心地性能・操縦安性を向上させる“タンデムホイールサスペンション”を考案・開発、高性能電気自動車“和-KAZ”に搭載した。その基本的な構造は4輪のタイヤを小径の8輪に置き換え、さらに隣り合う2輪を油圧配管で結合した油空圧サスペンションである。シミュレーションの結果、通常の4輪車に比べ車体の上下振動を3.6倍抑制する優れた乗り心地性能が明らかとなったほか、“和-KAZ”を用いた実車試験により、卓越した操縦安定性が定量的に確認された。

研究ノート
  • 中国経済発展の新しいボトルネック -中国物流問題の現状と課題

    香川 敏幸 慶應義塾大学総合政策学部教授
    孫前 進 慶應義塾大学SFC研究所所員(訪問)

    1970年代後期以来、改革・開放を進めている中国には、現在、急速な経済発展のテンポに対して遅れる物流部門の問題が、経済発展の新しいボトルネックになっている。本稿は、中国物流の現状と課題をマクロの視点から分析して明らかにすること目的とする。