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SFC × SDG

KEIO SFC JOURNAL Vol.19 No.1 SFC × SDG

2020.09 発行

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特集

SFC × SDG

特集招待論文
  • SDGsの研究基盤としてのインターネット環境

    植原 啓介 (慶應義塾大学環境情報学部准教授)
    村井 純 (慶應義塾大学環境情報学部教授)

    SDGsの推進にはデジタルデータの活用は不可欠である。SFC ではこれまで、インターネットやIoTの発展に大きく貢献してきており、社会においてデジタルデータを取り扱う基盤を構築してきた。SDGsの推進には、正確な計測と分析が必要となり、その領域のSFC におけるインターネット関連の研究活動を評価し、報告する。具体的には、InternetCAR、Auto-ID、Scanning the Earth/Safecast などの研究をデジタルデータのための基盤研究として考察する。

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  • デジタルファブリケーションとSDGs -ファブシティ概念を中心として

    田中 浩也 (慶應義塾大学環境情報学部教授)
    渡辺 ゆうか (慶應義塾大学非常勤講師)

    「デジタルものづくり」の拠点として始まったファブラボの、存在意義の再定義が進められている。デジタルデータから「もの」がつくられるようになったということは、すなわち、ものの輸送がデジタルデータの転送に置き換えられるということであり、また地域のファブラボが身近な素材やリサイクル材を活用した地産地消を促すことは、循環型社会や自給自足型都市の流れに結実しつつある。単に「ものを増やす」のではなく、必要最小限の適量のものをつくりながら、まち全体の構成をリデザインしようとすることが、ファブラボが新たに掲げる方向である。本稿はその中心概念である「ファブシティ」について、SDGs との関連において述べる。

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  • SDGsは国連初のコミュニケーション・デザイン -SDGsアイコン日本語版の制作プロセスから考察する

    川廷 昌弘 (株式会社博報堂DYホールディングス グループ広報・IR室CSRグループ推進担当部長)

    国連サミットで採択されたSDGs。国連本部はカラフルなアイコンを使ってコミュニケーションを開始した。これまでの環境コミュニケーションにおいては、課題を認知しても行動に繋がらないことが問題であった。そこでまず、SDGsアイコン日本語版の制作プロセスを振り返り、認知から行動へのつながりを検証したところ、セクターを超えた対話により制作された最大公約数の日本語版を公的機関が発表することで、複数の日本語版の乱立を防ぎ、多くの活用に繋がった。結果として、課題認知から行動へのアプローチを強める可能性が示唆された。

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  • SDGsの実施手段としての認証プログラム

    小坂 真理 (慶應義塾大学SFC 研究所上席所員)

    SDGsの課題として、目標を達成する明確な実施手法がないことがあげられる。そのため本稿では、第三者組織が公平で透明性の高い審査を実施する国際認証プログラム(FSC、MSC、フェアトレード)がどのSDGターゲットに寄与するか、そして今後どのようにプログラムがSDGs達成を支援できるのかについて検討した。分析の結果、これらの認証プログラムは91のSDGターゲットに合致する基準と、それを実施するための明確な実施プロセスを有することから、SDGsの実施手段のひとつとなり得ることがわかった。

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  • SDGsとビジネス -良品計画の優良事例化の試み

    川本 充 (慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任講師)

    今日のグローバル・ガバナンスの制度構造では、人権問題や環境問題に関する「ガバナンス・ギャップ」が認識されている。グローバル企業の規制に関する問題だが、これがグローバル化の問題を生じさせてきた面がある。そのギャップの解消のための戦略として、国際社会は、「原則」や「指針」といった非拘束的合意としてのソフト・ローを用いた戦略を展開している。今日、グローバル企業は、国連グローバル・コンパクトや責任投資原則、ビジネスと人権に関する指導原則といった諸原則に自主的に署名しつつ、自発的に、SDGsを活用しつつ、ビジネスを通じた社会問題解決を行うことで、このようなギャップの解消に貢献している。この点において、SDGsは、ステークホルダーに対し、企業の取り組みについて効果的に伝えることのできるコミュニケーション・ツールとして機能しつつある。良品計画(MUJI)のビジネスは、これを実践するものであり、SDGs貢献型ビジネスの優良事例化が期待される。

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自由論題投稿論文
  • [研究論文] アイヌ散文説話におけるトパットゥミをめぐる分析 -アイヌ(人間)の安全保障の考察に向けて

    山田 慎太郎 (東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻 多文化共生・統合人間学プログラム修士課程2年)

    本論文は、アイヌ散文説話における人々の日常生活の再建過程に着目し、先住民社会における日常生活の再建のあり方を研究する。そのうえで、彼らの生活再建のあり方が、現代社会における生活再建をめぐる課題においても重要であることを指摘しようと試みる。先住民社会から現代的な概念を考察することを通して、我々が久しく蔑ろにしてきた先住民社会が育んだ知を知ることは、現代社会に生きる我々にとっても重要である。

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  • [研究論文] 看護ケアを基盤とした個別性に応じたケアツールの評価手法の提案

    吉岡 純希 (慶應義塾大学SFC 研究所上席所員)
    宮川 祥子 (慶應義塾大学看護医療学部准教授)

    本研究では、個別性に合わせた看護ケアの支援のために新しくデザインされた「もの」を評価するための手法についての検討を行った。個別のケアニーズを基に行われたツールの開発を看護診断(NANDA-I)のリンケージを利用し、看護介入(NIC)と介入の成果(NOC)を導き出すことで、看護過程のプロセスとして解釈した。ケアのニーズに基づいて製作されたツールを、看護ケアのフレームで評価するための具体的な手順を示し、看護ケアを基盤としたデザイン手法として提案する。

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  • [研究論文] 早生まれの影響 -小4から中3の日本の子ども達の相対的年齢効果

    植村 理 (慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程)

    日本では厳格な学年制がとられているが、同学年の中で出生時期による相対的年齢効果を、大規模データに基づき検証した研究は少ない。本稿は、国内自治体の小4から中3までの6学年、3ヶ年にわたる各年30万人規模の悉皆調査の個票データを使用し、標準化された学力テストにおける相対年齢効果を検証した。結果、小4時点では、最も相対的に若い1-3月生まれは、4-6月生まれに対し、国語や数学の学力差が偏差値で約3.0と顕著であり、学年が上がるごとに差は縮小するが、中3でも1.0以上の0.1%水準で統計的有意な差が観察された。

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