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- KEIO SFC JOURNAL
- Vol.25 No.1

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[退職教員特別寄稿]
自分で提言しておきながら特大ブーメランの巻 -生命科学の研究者を目指す君に
金井 昭夫(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授 / 慶應義塾大学環境情報学部教授) 生命科学の研究者として生きていくためには、学生時代にどのようなことを気にかけたら良いのだろうか?ある程度の優秀さを持って大学生となった大多数の君たちにとって、研究テーマの選び方、学術論文の発表などに関して幾つかの知っておくべきポイントがあるように思える。執筆者は、2026年3月をもって慶應義塾大学の教員を定年退職ということで、これまでにSFCの、特に生命科学を専攻している学生に、授業や研究活動を通じて伝えてきたことなどを書いておこうと考えた。本稿は、いわば遺言である。
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[退職教員特別寄稿]
GIS・環境・都市の交差点から -SFCと共に歩んだ三十年の記録
厳 網林(慶應義塾大学環境情報学部教授) 本稿は、筆者が地理情報科学(GIS)を基軸に、都市・地域の持続可能な発展をめざして学際的かつ実践的に展開してきた三十年にわたる教育・研究活動を総括するものです。中国の農村に生まれ育った筆者は、改革開放の初期を経て日本に留学し、1990年代初頭にSFCと出会いました。SFCを舞台に、GISをマッピングや空間分析の道具から「空間と創造」の知識体系へと発展させ、さまざまな教育プログラムに実装することで、多くの環境リーダーを育成してきました。また、生態環境評価、レジリエンス、食料・エネルギー・水(FEW)ネクサスといった分野における国内外の共同研究を通じて、持続可能な都市・地域づくりに向けた共創的研究体系を構築してきました。
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[研究論文]
Motherhood, Migration and COVID-19 ―French Mothers’ Perinatal Experience in Japan
エムパコ アンソフィー(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程) 濱田 庸子(慶應義塾大学名誉教授) 岡田 暁宜(名古屋大学総合保健体育科学センター教授) 本稿は、母親である在日フランス人に関する縦断的研究の一部である。我々は、移住してきた母親の周産期精神保健に関する研究に、新たな知見を引き出すため、特権的移住という視点を研究に導入する。我々は、オンライン調査への回答に基づく質的・量的データを用いた探索的な混合研究手法を考案した。その結果、(i)COVID19の制限的措置よりも、文化の違いや言葉の壁を感じることの方が、母親のメンタルヘルスに長期的に深刻な影響を与えること、(ii)患者と医療従事者の対人関係の質が、好ましくない経験のバランスをとる上で重要な役割を担っていることがわかった。
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[研究ノート]
著作権法におけるキャラクターの法的保護 -判例法理と学説上の諸論点
山本 健太(国士舘大学大学院総合知的財産法学研究科総合知的財産法学専攻修士課程1年) 本稿では、著作権法におけるキャラクターの法的保護のあり方について検討した。日本の最高裁判所は、「キャラクター」という概念は著作物に該当しないと整理しているが、具体的な表現としての側面には保護が及ぶ。しかし、「文学的キャラクター」は表現としての側面の範囲が明瞭ではなく、保護される局面が限定されている。そして、著作物の類似性判断に関する裁判所の判断手法は、「直接感得性独自基準説」だと理解されているが、これを批判する「創作的表現共通性一元説」に説得力がある。
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[学会動向]
Media as Ontology and Epistemology ―Rethinking Postman’s Argument with Insights from China
李 昊光(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程) 韩 松錡(東京大学大学院総合文化研究科後期博士課程) 本論文では、新時代におけるメディアの変遷について考察する。ニール・ポストマンの「メディアの認識論的側面」に関する主張を参照し、新たなメディアの存在論的特性を分析する。また、新時代におけるパーソナルメディアの普及が、人々の存在論的再構築を大規模に促進したことを論じる。さらに、中国を例として、新しいメディアの急速な普及が、個人および国家の両レベルでさまざまな社会問題を引き起こす可能性があることから、学者はその浸透しやすい侵襲性に対して十分な注意を払うべきであると主張する。
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[コラム]
表紙写真 -SFC の瞬間を未来へつなぐ:My Favorite Snapshot of SFC に寄せて