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日本研究プラットフォーム・ラボとSFCの国際化戦略-「新しい『日本研究』の理論と実践」プロジェクトを中心に-

KEIO SFC JOURNAL Vol.13 No.1 日本研究プラットフォーム・ラボとSFCの国際化戦略-「新しい『日本研究』の理論と実践」プロジェクトを中心に-

2013.09 発行

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特集招待論文
  • 国民大学日本学研究所の日本研究:10 年間の歩み

    李 元徳 (国民大学校国際学部教授/日本学研究所所長)

    国民大学日本学研究所は2002 年に設立されて以来、韓国の日本研究ニーズに応じる研究成果を蓄積し、国内外日本研究者ネットワークの構築に努力した。日本学研究所には17 名の博士級研究員が所属し、専攻は現代日本の政治と戦後日韓関係史の分野に集中されている。10 年間、力点を置いて推進した研究分野は、「現代日本の政治経済システム」と「戦後日韓外交史」である。今後、日本研究所はこれまでの研究蓄積を土台とし、戦後日韓外交史を中心とする研究を行う。一方、韓国と日本が抱えている人口、財政、福祉、環境、エネルギーなど共通の課題に関する研究も企画、遂行する計画である。

  • 現代台湾における日本研究:現状と挑戦

    李 世暉 (国立政治大学日本研究修士課程准教授)

    戦後の台湾における日本研究は、政府による政策の変化を背景にして、1990 年代になってから、制約が徐々に解かれた。2000 年以降、新しい世代の日本研究者の登場とともに、台湾の日本研究は専門化しつつある。全般的に見れば、現代台湾の日本研究は、人材の養成や学術の発展という側面で、以下の七つの重要な問題に直面している。第一に日本の国際的影響力の低下である。第二に台湾の日本研究が実用を優先しているという問題である。第三に台湾は地域研究の伝統を欠いていることである。第四に台湾の日本研究に対する日本からの関心が不足していることである。第五に台湾において日本研究の専門的な定期刊行物が欠乏していることである。第六に台湾において日本研究の人材が不足していることである。第七に台湾において日本研究がまだ学問として成熟していないことである。以上の問題に加え、台湾の日本研究は、以下にみる三つの大きな課題に直面している。学問の中核的価値を構成する必要性があること、専門人材養成と雇用をめぐる問題を克服すること、さらに学術的な交流を以て台日関係の発展へ貢献することである。以上の問題に挑戦するために現代台湾の日本研究は、学術と実際の経験、制度と傾向、そしてグローバルとローカル、が相互に連携し合いながら発展する必要がある。

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  • 協調的創造性、ダーク・エナジー、アニメのグローバルな成功

    コンドリー・イアン (マサチューセッツ工科大学比較メディア研究准教授)

    本論文において、拙著『アニメのダーク・エナジー:協調的創造性と日本のメディアの成功例』における中心的なアイデアの紹介を行う。アニメを制作する企業マッドハウスにおけるフィールドワークを含む、人類学的な研究を行うとともに、オリジナルの『ガンダム』シリーズに関する歴史的な考察をふまえて、協調的創造性のプラットフォームとしてアニメを位置付けることができるかどうか検討する。日本アニメのグローバルな成功は、映画、テレビ、漫画、玩具、そしてその他のライセンス事業を含めて、アニメファンと創作者をつなぐ集団的なソーシャル・エナジーに基づいていると主張する。このような集団的なソーシャル・エナジーがアニメの精神であると著者は考えている。

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自由論題研究論文
  • 建国前後の中国共産党の香港政策 - 中華人民共和国建国直前から1950 年代末まで

    廉 舒 (慶應義塾大学総合政策学部非常勤講師)

    本稿は中華人民共和国建国前後における中国共産党香港政策に対する考察を目的とする。これまでの先行研究には、1949 年2 月頃に中国共産党が香港の奪回延期を決めたという指摘が見られるが、本研究では、中国共産党は実際には初めから香港を回収する意図がなかったことを明らかにする。また、中国共産党の香港政策を検証することによって、中国共産党の香港政策及び対英政策には柔軟性および現実主義的要素が存在することを明らかにし、当時の香港政策が中国の対外戦略における対「中間地帯」政策の一環という位置づけで展開されたことを述べたいと思う。

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  • 越境:中国・ベトナム国境貿易と生活実践

    韓 娜 (慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)

    本稿は、中国・ベトナム国境におけるベトナム人「運び屋」のインフォーマルな国境貿易を取り上げ、90 年代に国交を正常化した後に国境を巡る一連の政治経済的変化を積極的に受容し、国境に跨る生活圏に依存する地元住民の生活実践を明らかにする。こうしたインフォーマルな国境貿易は、越境や貿易の制度化など国家の権力行使がもたらすリスクをできるだけ回避しながら、生活の維持を図ろうとする地元住民の合理的な選択であることを、当事者たちの事例を通して微視的に描き出す。

  • グルジアの議会選挙 -「非暴力的革命」と民主的政権交代の狭間で

    ゴギナシュヴィリ、ダヴィド (慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程)

    グルジアで、2012 年の10 月に行われた議会選挙によって、政権が平和的に交代したことは旧ソ連地域において極めて珍しい出来事であるため、当選挙は世界中の注目を浴びた。本稿は、政権交代の過程は平等で民主的であったという、広く認識された論点に反論し、親欧米的な旧政権 対 親露的な新政権というような枠組みでグルジアの選挙を、国際政治のプリズムで分析する議論を批判している。一方で、政権交代の過程におけるグルジア社会の役割を重視し、グルジア選挙の特徴を把握するにはグルジア国内事情、つまり「非暴力的革命」を担った市民社会団体の活動、社会運動等を強調する。

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  • 第二言語習得における句動詞 - 三語句動詞の学習において日本人学習者が直面する問題点

    中村 俊佑 (東京都立瑞穂農芸高等学校教諭)

    本研究は、日本人英語学習者が三語句動詞を学習する際に、習得が困難な項目を分析することを目的とする。第二言語習得の分野において、英語における句動詞の習得は困難とされているが、本論文では句動詞研究のなかでも未開拓の領域である三語句動詞に焦点を当てて議論を展開する。主に、日本語からの連想度や学習者の経験度、海外経験の有無、英語力など、どのような学習者変数が習得に影響を与えているかを分析する。本研究で明らかになったことを踏まえ、日本人英語学習者に句動詞を教える際の教育的示唆を提示する。

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  • 丸山眞男のアメリカ観

    江上 琢成 (杉森高等学校常勤講師)

    20 世紀の代表的知識人・丸山眞男は、アメリカの「ブルジョア民主主義」という特質が、戦前にファシズムに対抗したことを評価したが、戦後は、冷戦に伴って、日本の再軍備やアメリカのマッカーシズムを惹起したと批判した。1961 年の訪米後、丸山は、①政治学から政治思想史への研究対象の移行や、②過去の歴史を持たずに近代化したアメリカの不可解さなどを理由に、公でのアメリカ論を避けた。だが丸山は、私的には、アメリカの多様性に関心を持ち続けた。それは、反戦や反核など、右傾化に反省を迫るリベラルな環境が存在したからである。

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