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- Vol.9 No.1
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生物多様性保全に向けた空間情報学的アプローチ‐富士丹沢地域を事例研究として
土光 智子 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程 福井 弘道 慶應義塾大学総合政策学部教授 本稿では、生物多様性保全に向けた空間情報アプローチを紹介する。第1章では、エコロジカルネットワークと研究対象地域の富士丹沢地域を概観した。第2章では、生息地域空間的分布モデリングを用いて、エコロジカルネットワークの必要性をアセスメントする定量的手法を提案した。第3章は、ツキノワグマの生態を調査するフィールドワーク方法を紹介した。第4章では、最新型の動物衛星追跡システムの精度実証実験を紹介した。第5章においては、政策決定支援システムとして、Web-GISを開発した。第6章では、将来展望を述べた。
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GPS携帯を活用した行動調査に関する基礎的研究
松本 修一 慶應義塾大学先導研究センター講師 近年、携帯電話を活用したプローブパーソン調査など交通行動調査への適用が行われている。本研究ではこのプローブパーソン調査で得られるGPS測位データを解析することによって、交通モードや移動経路、立寄り場所などの推定精度を検証するものである。具体的にはGPS携帯をお遍路さんに携帯してもらい、お寺からお寺に移動する際のGPSログデータを解析することから、移動経路や交通モードなどの把握を試みた。この結果遍路の交通モード、立寄り場所などを高い精度で推定することが出来た。
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生体信号計測による景観評価因子の抽出
菊地 進一 慶應義塾大学環境情報学部専任講師 福田 亮子 慶應義塾大学環境情報学部専任講師 古谷 知之 慶應義塾大学総合政策学部准教授 石崎 俊 慶應義塾大学環境情報学部教授 現在、景観の保全に対する法的な根拠は建築物の高さや色彩などに関する主観評価を主体としており、景観の総合評価に対する客観的な計測指標が必要となっている。我々は景観評価を高次認知機能の一つとして捉え、近赤外分光装置(NIRS)を用いて景観画像を見た際に生じる脳機能の変化を計測したところ、空間認知領域を中心に有意差が観察された。またアイカメラを用いた視線解析では、構図や物体の認知を示す視線の動きなどが認められた。今後、このような生体計測情報を加味した景観評価の客観性・定量性の向上が期待される。
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観光行動データの時空間データマイニング
古谷 知之 慶應義塾大学総合政策学部准教授 昨年10月に観光庁が発足し、観光行政を一元的に扱う窓口ができた。しかしながら、我が国の観光行政において観光統計や調査データの整備は十分と言えず、観光庁の主要施策の一つに観光統計整備が掲げられている。なかでも、観光行動軌跡の調査とその分析が課題となっている。本稿では、携帯型位置情報端末を使った観光客行動調査(プローブパーソン調査)の観光政策への応用可能性を検討する一材料として、箱根地域で実施した行動データの時空間マイニング分析例を紹介する。GPS軌跡データを用いた時空間カーネル密度関数と個人属性を元にmutual clusteringという手法を使って時空間クラスタリングを行い、観光行動特性を明らかにしている。
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マーケット・セグメンテーション技法を用いた訪日台湾レジャー観光客のプロファイリング分析
ハンドラ、イザベル 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程 日本政府は2003年、訪日外国人観光客を増加させるため、ビジット・ジャパン・キャンペーン(以下VJC)を開始した。これは、出国日本人観光客数(1622万人)と訪日外国人観光客数(477万人)の不均衡をなくすことを目的としている。Pearce [2005], Kotler et al. [2006], Swarbrooke et al. [2007] および、Dickman [1999] と比較すると、VJCはここ数年比較的簡素なアプローチでキャンペーンを実施してきている。しかし、訪日台湾人を対象とした調査を行った結果、VJCにはその人口特性、地理的立地、ビジネス、レジャーといった渡航目的別の渡航動機などが反映されておらず、マス・マーケティング戦略にかたよっている事から十分には機能していないことが明らかとなった。本研究は、このような問題意識に基づき、日本にとって重要な観光市場の一つである台湾のレジャー観光客に対する有効なマーケティングキャンペーンの提案を試みるものである。本研究は、訪日台湾人の訪日意識を分析した結果、それを限定すると思われる因子を抽出し、これを用いることで有効ないくつかの類型を見出した。
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日本語LFGに基づく用言に連接する形式名詞の処理
大熊 智子 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程 富士ゼロックス(株)研究技術開発本部システム要素技術研究所 本稿の目的は、用言を含む埋め込み句に連接する名詞が体言として現れる場合と埋め込み句をまとめ上げて副詞的な連用修飾成分を形成する形成子として働く場合について、形式名詞の処理手法を確立することにある。日本語研究の分野では、形式名詞の特徴や性質についての研究が行われてきたが、それをそのままシステムに導入しても不要な曖昧性を生む。本研究では副詞句を形成する形式名詞の処理を日本語LFGシステムで実現する手法を提案し、この手法で先行詞と形成子の自動的な判別が可能であることを評価実験によって検証した。
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未完の安全確保‐モザンビーク自衛隊派遣の政策決定過程
庄司 貴由 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程 モザンビーク自衛隊派遣は、対アフリカ自衛隊派遣の新たな出発点となった。本稿では、モザンビーク派遣における国内の政策決定過程を、安全確保の側面から検証する。派遣地域の選定において、日本政府は五原則に基づき安全性を考慮したが、派遣場所の決定後、安全確保問題は影を潜めることになる。国連の要請とカンボジアにおける警察官の死亡は、その傾向を追認する契機となった。その結果、モザンビーク派遣は通常の半分の期間で準備されたにもかかわらず、現地の活動に遅滞と他国依存をもたらし、派遣要員の負担を増大させたのである。
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2007年「衆参ねじれ」発生前後の国会比較
松浦 淳介 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程 本稿は、2007年の「衆参ねじれ」の発生が、立法過程にどのような変化をもたらしたのかということを、特に両議院関係の観点から明らかにしようとするものである。具体的には、衆議院と参議院の本会議における法案議決の「順序」に着目して、参議院がどれほど衆議院に対して協調的、あるいは、敵対的な議事運営を行っているのか測定し、ねじれ前の国会(2000年~2007年)との比較を試みた。その結果、ねじれ前とねじれ後の間には、法案審議の結果だけでなく、その過程にもいくつかの注目すべき差異があることが明らかとなった。
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「新デンマーク人」をめぐる価値と境界の政治‐デンマークにおける移民・難民政策とクリーヴィッジ
中村 友子 東京大学大学院公共政策学教育部専門職学位課程1年 近年、S.ロッカンの論じた伝統的クリーヴィッジに代わって価値や組織にまつわるクリーヴィッジが見られるようになった。デンマークにおいては、新たな価値・規範・アイディアを有する行為主体が生まれ、言説を援用した移民・難民政策によって新しいクリーヴィッジが生まれたと指摘できる。デンマーク人有権者の学歴と政党選択の関係性が強まっており、デンマーク社会への被統合者である「新デンマーク人」間においては、新たな行為主体の台頭によって新左派と新右派の間の政治空間にクリーヴィッジが生じている。
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ポリネコの応用によるストック&ファシリテーション型情報サービスの考察
岩田 崇 慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問) 株式会社ハンマーバード代表 インターネットを利用した政策ファシリテーター(ポリネコ)の試作版から得た知見を踏まえ、ビジネスモデルの疲弊が指摘される新聞、テレビ、雑誌の今後のビジネスモデルとして、ストック型情報提供サービスの可能性を考察する。