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- Vol.8 No.2
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実時間コミュニケーションとコラボレーション
シンチャイ カモルピワォン ソンクラーナカリン大学工学部准教授 トサポン カモルピワォン ソンクラーナカリン大学工学部准教授 ストン サエ・ワォン ソンクラーナカリン大学工学部専任講師 本稿では、まず、SIP (Session Initiation Protocol) の会議通話向けの拡張を提案した。次に、この拡張の利用例として、enhance interactive distance learning (IDL) アプリケーションにおける利用例を示した。本研究では、会議向けの拡張のため、Conference Manager Server (CMS) と Conference Repository (CR) の2つのコンポーネントの追加を提案し、E ラーニング用のアプリケーションへの適用を検討した。E ラーニングにおいては、受講者間の会話など、インタラクティブなコミュニケーションが必要な場合がある。また、教材のリアルタイム共有、黒板の共有、マルチメディア録音機能の利用も考えられる。本研究では、これらの機能の実装方針を提案した。
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DVB-S を使用した片方向通信路におけるRObust Header Compression (ROHC) の性能評価
アン ウェイ チャン マレーシア科学大学計算機科学部研究員 ワン タ チー マレーシア科学大学計算機科学部専任講師 片岡 広太郎 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程 テ チー ホン マレーシア科学大学計算機科学部研究員 Unidirectional Lightweight Encapsulation (ULE) は、衛星通信回線の片方向通信路(Unidirectional Link, UDL)上でDigital Video Broadcasting via Satellite (DVB-S) を用いて効率的なIP データ通信を行うための仕組みである。本稿では、RObust Header Compression (ROHC) を用いて、より効率的に衛星通信回線上でIP データ通信を行う手法を提案した。ROHC はIP ヘッダの圧縮手法である。実験により衛星通信回線上でDVB-S とROHC を利用した際の通信効率を測定し、解析した。その結果、VOIP 等のリアルタイム通信に多く使われる、512 バイト未満のIP パケットに適用することで、通信効率が大幅に改善することが判明した。
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ANGKOR: 学術研究ネットワークにおけるリアルタイム遠隔教室
カンチャナ カンチャナスット アジア工科大学工学部教授、IntERLab 所長 ジャン・フランソワ ベートロン ピエール&マリー・キュリー大学(パリ第6大学)医学部教授 ジャン・フランソワ ヴィベー ピエール&マリー・キュリー大学(パリ第6大学)医学部教授 本稿では、ANGKOR プロジェクトにおける成果を解説する。本プロジェクトでは、リッチメディアと双方向のインタラクティブセッションを用いて、遠隔地からの医学教育を実施した。この遠隔医学教育実験は、フランスのUniversity of Pierre et Marie Curie (UPMC) 医学部と、カンボジアのthe University of Health Sciences in Cambodia (UHSC) の間で行った。この実験では、利超広帯域回線と狭帯域回線を通してビデオ画像を送信するという技術的な試みを行った。フランス?日本間は超広帯域回線を、日本?カンボジア間は衛星を用いた狭帯域回線を利用し、医学教育用リッチメディアコンテンツをDVTS を用いて送信した。また、様々な受講環境におけるIP マルチキャストの利用、リアルタイムなビデオフレーム数間引き技術を用いた狭帯域ネットワークへのストリーム配信、携帯端末を用いた移動教室環境の整備といった点について、技術的検証を行った。本プロジェクトによる実験の結果、様々な受講環境下での遠隔教育環境構築の手法を提案できた。
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AI3 プロジェクトにおけるSFCの活動
渡部 陽仁 本稿では、AI3 プロジェクトの設立から今日に至るまでの、当プロジェクトにおけるSFC の活動を紹介する。SFC は、当プロジェクトを通して、衛星通信回線を用いたインターネット通信技術の開発、東南アジア地域におけるインターネット通信基盤整備、マルチキャストネットワークの構築、遠隔教育、人材育成など、実に様々な活動を行い、大きな成果を挙げている。本稿では、その概要を紹介する。
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情報技術に関する地域規模の演習ワークショップの実践を通した新たな教育展開に関する研究
バースー パッチャリー 慶應義塾大学SFC 研究所上席所員(訪問) 三川 荘子 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特別研究講師 アフマド バスキ 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程 大川 恵子 慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授 本研究は、講義配信という従来の遠隔教育の枠を超え、情報技術の演習環境を構築し、発展途上国の学習者に対して新たな教育展開を行った。本手法は、教えるための資源が限られるアジア地域において、情報技術習得の機会拡大に貢献した。提案する遠隔講義環境は、高品質の講義映像を分散した複数教室で同時受信が可能であり、教室間のコミュニケーションも保障する。また、各参加者に仮想環境を用いた大規模演習環境を提供する。提案手法を2006 年及び2008 年にアジア規模ワークショップとして実践し、評価を通してその実現性と有用性を明らかにした。
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インターネット環境を利用した持続可能な教育協力アーキテクチャ
三川 荘子 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特別研究講師 大川 恵子 慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授 村井 純 慶應義塾大学環境情報学部教授 本研究は、真の世界市民たる学生を育成するため、国を超えた大学同士の連結を実現させ、大学同士の教育協力を持続的に行うアーキテクチャを提案した。遠隔教育システムでは、大学やコンテンツ提供者が技術的に教育協力に参加できる枠組みの構築を行った。協力ガイドラインでは、提案システム上での大学間の教育協力手法の提案に加え、他の遠隔教育システムとの連結も可能とした。オペレータ育成を通し、システムの持続的・自律的な運用を可能とした。本研究は、地域規模の教育協力を持続可能なものにするため多角的なアプローチを取り、遠隔教育システム・ガイドラインの作成・オペレータの育成を行った。他の研究ではこれら3 つの要素が全ては揃っておらず、持続性に欠ける。6 年間の教育協力を通した実証実験より、提案アーキテクチャの有用性及び持続可能性を証明した。
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北東アジアの多国籍企業と環境保全‐新日鉄とポスコを事例として
Bae Yoon 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程 本稿の目的は北東アジアにおける多国籍企業と環境保全の関係を明らかにすることである。これまで多国籍企業は国家間の経済発展に重要な役割を果たした。一方、投資先の環境問題の責任が問われ、「公害輸出」が話題になったのである。ところが、近年の多国籍企業は環境協力を含む「企業の社会的責任」を経営戦略に導入しつつある。本稿では多国籍企業を取り巻く状況(国際経済、政策、経営の連携)の変化が「企業の社会的責任」の導入に影響を与えたと仮説を設ける。
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応用政治哲学とは何か‐カント的展望
宮代 康丈 パリ第4大学(パリ・ソルボンヌ)博士課程(政治哲学・倫理学) 本稿の目的は応用政治哲学の指針をカント的展望において提示することにある。そのために、3つの問いを導きの糸にする。まず、応用政治哲学を根本的に動機づけている第1 の問いとして、今後、政治哲学が哲学として発展するためには、論点を基礎づけから応用へと移さなければならないのではないか。第2 に、もしそのような変更が必要であるならば、基礎づけから応用への移行を哲学的にどのように考えるべきか。最後に第3 の問いとして、応用政治哲学のリミットは何か。これらの問いに答えながら、応用政治哲学の考え方を示す。
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1960 年代前半の中国の対外政策‐対フランス政策を中心に
山影 統 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程 1960 年代前半、中国外交は中ソ対立や大躍進の失敗によって、大きな転換を余儀なくされた。こうした中、対西側先進諸国、とりわけ、1964 年に西側諸国の中ではじめて国交樹立を果たした対フランス政策が中国の対外政策にとって非常に重要な意味を持つようになる。本論文では、中国が対フランス政策をどのように対外戦略上位置づけ、そしてどのように中仏国交樹立の障害を認識していたのかを明らかにする。
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ボスニア・ヘルツェゴビナの平和構築における警察改革‐治安部門改革の視点から
中村 健史 慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問) 本稿はボスニア・ヘルツェゴビナの警察改革を事例に、1990 年代後半以降、平和構築との関連で注目されている治安部門改革の視点から分析を試みるものである。具体的には、オーナーシップの確立、効率的・効果的な制度、規範の浸透という3つの視点からボスニア・ヘルツェゴビナの警察改革に関する政治プロセスを分析することで、同国及びEU を中心とする国際社会がボスニアの警察改革において抱えている問題点と、その克服へ向けた方針を提示する。
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インドネシアの学生ダアワ運動の原点‐サルマン・モスクにおけるイスラーム運動の展開
野中 葉 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程 日本学術振興会特別研究員 インドネシアの大学生たちによるダアワと呼ばれるイスラーム運動は、近年のイスラーム台頭の現れの一つとして、また躍進するイスラーム政党の支持基盤として、注目が集まっている。しかし、こうした運動の原点が明らかにされたとは言いがたい。本稿では、大学キャンパスにおけるダアワの原点として、バンドゥン工科大学のサルマン・モスクでの運動を取り上げる。筆者が現地調査で行った当事者へのインタビュー結果を用いて、当時の政治社会状況や先行研究の成果と照合しながら、運動の歴史を論述する。
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社会的入院に関する総合的レビューとその要因モデルの構築
水口 由美 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程 社会的入院は、日本の医療介護供給体制が持つ最大の問題の一つであるといっても過言ではない。本研究は、社会的入院をキーワードに346 件、関連用語に関する文献を含め1,000 件以上の先行研究を抽出し、総合的レビューを行い、(1) 先行研究の特徴をまとめ、(2) 社会的入院の発生要因に関して、患者・家族・病院の当事者要因と制度・システム上の背景要因とに分け、問題解決の出発点として役立つ総合的な要因モデルを構築した。
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統合失調症患者における概念体系の異常
清野 絵 慶應義塾大学SFC 研究所上席所員(訪問) 日本学術振興会特別研究員 統合失調症患者の概念体系の異常を明らかにすることを目的として、連想実験を行なった。概念体系は統合失調症の思考障害や認知機能障害と深い関わりがある。そして、思考障害や認知機能障害は、統合失調症の病態解明やリハビリテーションにおいて重要視されている。対象は統合失調症患者19 名、健常対照群21 名である。その結果、統合失調症患者の2 次元配置図と概念体系指標について健常者との違いが認められた。この結果、統合失調症患者の概念構造は健常者と質的に異なることが明らかになった。