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- KEIO SFC JOURNAL
- Vol.10 No.1
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サイバネティックヒューマン‐人間の拡張、人間の再デザイン
暦本 純一 東京大学大学院情報学環教授 株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所インタラクションラボラトリー室長 従来のユーザインタフェースやヒューマンコンピュータインタラクションでは、人間と人工物と間の境界面( インタフェース) の改善を主な目標としてきた。ダグラス・エンゲルバートが行った1968 年の歴史的なデモに触発され、以降40 年間にわたって多くのインタラクション研究が行われてきたが、それらの多くはこの境界面に関するものだった。一方、センシングやコンピューティング技術の進化により、人工物と人間とが一体化し、人間自身を進化・拡張させる手段としてテクノロジーを考えることが可能になってきている。本稿ではこの方向を「サイバネティクヒューマン」と総称する。サイバネティックヒューマンは人間の知的能力の拡張にとどまらず、人間の身体能力を増強するような技術を含み、さらにはそれらの拡張された人間がネットワークで連携する超知性の発展へと繋がる。これらの発想はエンゲルバートやブッシュらが約半世紀前に描いた人間拡張に関するビジョンにも深く関連する。人間そのものをテクノロジーによって再デザインするにはどうすればいいのかというオープンクエスチョンでもある。本稿では人間の拡張についてのデザインの役割・方向性について議論し、筆者の研究グループで現在具体的に進行中の人間拡張研究プロジェクトについて紹介する。
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takram design engineeringにおけるデザインプロセスの実践
田川 欣哉 takram design engineering 代表 takram は2006 年に東京で設立された製品開発デザイン会社である。takram のデザインエンジニアはプロトタイピングの手法を用いて、ハードウェアからソフトウェアまで幅広い製品の設計とデザインを手がけている。製造の上流工程で実施するプロトタイピングは、製品企画を高い精度で練り上げるための有効な手法である。
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デジタル・メディアはもはやニュー・メディアではない
久保田 晃弘 多摩美術大学美術学部教授 バイオメディアは物質と情報の双方が深く結合した、ハイブリッドなメディアである。その特徴は「バイブリッド性」「システム性」「生成性」「不確実性」「超物質性」の5 つにまとめられる。バイオメディアがデジタル・メディアをリメディエイトすることで、それはトランスマテリアルな、自然と文化が入れ代わった、今日の社会につながっていく。21 世紀のニュー・メディアとしてのバイオメディアのデザインは、そこから始まる。
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未来の天才デザイナー
テルジディス, コスタス ハーバード大学 GSD 准教授 中国語を理解しない人間が、閉じた部屋の中で与えられたルールをもとに並べた漢字カードを、中国語を母国語にする人間がよくできた漢詩であると読んだとして、これは中国語の理解と言えるのか? という「中国語の部屋のパラドクス」は意図と理解そして意識的経験に関する問題に議論を呼び起こす。 複雑で多様な問題に総合的に取り組まなければならないデザイン行為は人間の精神にしかできない神聖な特権で、なかでも「天才」は、他の人には無いアイデアを産み出す天賦の知的能力だった。コンピュータは人間ではないので思考できず、天才にはなれない。コンピュータは意識を持たず、意図性はその定義からいっても存在しないにもかかわらず、人間の意識に影響する精神の拡張である。それは論理的計算処理の量と速度の優位性を活かして、人間の知的能力には困難かつ予測不能な未知の知識をもたらすからだ。それが正しいと判断されるのはその手法が首尾一貫していて追跡可能な必然に基づいているからだ。問題を解く合理的過程をルール構造として抽象化すれば、それを高速で正確な手段で実行できる。重要なのはそれを人間が自分の思考と比較し、双方向かつ同時並行な共同作業をして補完しあえることだ。それは人間に予測も理解もできない構造を明らかにする。再帰方程式によるフラクタルな振る舞いは人間の解釈に無関係に自然界で観察される仕組みだが、意識のない機械が産み出したその構造に人間の意識が影響される。コンピューテーショナルなパターンは、人間の発明というより論理的で算術的な既存の構造の発見である。 既にデザインの分野では多様な仕事が置き換えられていて、コンピュータスクリーン上の現象とデザイナーのインタラクションがデザインのコンピュータ支援の主な興味と話題になりつつある。意識のあるデザイナーが意識の無いコンピュータに影響されるデザインという考え方は、デザイナーがもともと求めていたことと結果的になしたことの区別をぼかす。道具を用い、その振る舞いを観察することで新しい「解釈」が生まれ、デザインは創造者の存在に左右されない現象だととらえれば、意識とデザインはその存在価値を再度区別され定義される。意識のある人間はランダムになれない。なぜなら意識は思考の制御だという前提と矛盾するからだ。にもかかわらずランダムなプロセスで有効な解決方法が明らかになることがある。意図と結果の差異は実は人間の解釈の問題であり、未知のプロセスから可能性を垣間みることなのだ。 デザイナーの仕事と技術はコンピュータに取って代わられ、多くの人間は、新しいコンセプトや形態の確立はその道具にあり、道具をつくった人間が発明者ではないのかと思い始めている。建物の機能を入力すれば全ての設計図を自動的に出力して、しかも人間が考えるより良い結果を出すソフトウェアが登場するかもしれない。間接的にデザインをする道具を創る者が新しいデザイナーだろう。道具をつくるものと使うものが同じ人間ならランダムと意識は共存してそのギャップを埋め、「中国語の部屋」の内外を繋ぐ通路になるだろう。 (備考) ハーバード大学GSD で建築におけるコンピューテーションの手法を教えるコスタス・テルジディス氏は「アルゴリズミック・アーキテクチャー」(日本語版は田中浩也監訳)の著作で知られるデザイン理論家あるいはコンピュータ思想家と言うべき存在である。今回寄稿頂いた論文もデザイン行為とは何かを哲学的に問い直すテーマを扱い、人間中心主義の現代思想に食い込むコンピュータの存在を論じている。英文論文であるため本アブストラクトは私(池田 靖史)の責任で作成した。
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サン・シモンの「自由主義」の射程
中嶋 洋平 フランス国立社会科学高等研究院(EHESS)政治研究系博士課程 慶應義塾大学SFC 研究所上席所員(訪問) 後期サン・シモン思想は1819 年の『組織者』以降、社会主義思想に転換するとされてきたが、そのような主張には留保が必要である。サン・シモンは常に自由主義革命を支持しつつ、自由主義の観念性を批判し、社会改革に有用な実証的自由主義としての産業主義を深化させ続けた。産業体制において政府は産業に最も有効な政策を立案、遂行せねばならない。社会は市民が産業活動の中で実証的に、そして自発的に得る「公共心」によって維持される。そして「公共心」は人間同士の博愛という道徳的な意識によって強化されるだろう。
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「リラクセーション」の概念分析‐産後早期の女性を対象としたケアへの適用の検討
中北 充子 慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科後期博士課程 本研究は「リラクセーション」の概念を分析し、産後の女性を対象としたケアにおいてこの概念を適用する可能性を検討することが目的である。Rodgers の概念分析の手法を参考に、先行要件、属性、帰結、関連概念を検討し分析した。結果、リラクセーションを「ストレスと相対する概念で、心身が緊張した状態へ働きかけることによって生じる反応や効果であり、心身のバランスがとれた望ましい状態への変化」と定義した。さらにリラクセーションは、産後早期の女性への看護ケア介入とその評価をする際に適用可能な概念であることを確認した。
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2007年「衆参ねじれ」における政府の立法戦略
松浦 淳介 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程 信州大学全学教育機構非常勤講師 本稿は、2007 年の参議院選挙によって生じた「衆参ねじれ」(divided diet)のもとの国会において、政府がどのような立法を推進したのかを明らかにしようと試みたものである。今回の「衆参ねじれ」における政府立法の最大の特徴は、ねじれ前と比較して、一般に考えられているほど法案の成立率が低下していないという点に求めることができる。本稿では、これを政府の戦略的な立法による結果として捉え、法案の絞り込みという観点から検証するとともに、参議院が立法過程に及ぼす影響についても考察した。
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金融サービスにおけるコーポレイト・ブランディング‐インドにおけるリテールバンクの経営陣と顧客の認識
ビローレ, ソニヤ 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程(2008 年9月所定単位取得退学) 桑原 武夫 慶應義塾大学総合政策学部教授 本論は、銀行の企業ブランディングと、「ブランドとしての銀行」に関する企業と顧客、双方の認識を対象とする研究である。企業ブランディングと顧客行動の研究モデルを提案し、ブランド要素に関する認識の共通点と相違点を調べた。インドの3 都市で32 銀行と520 人の顧客を対象に調査を実施した結果から、経営陣の予測と顧客の認識の違いが存在する5 つの重要なブランド要素を発見した。これらに基づき、銀行業界でのブランド戦略の成功、顧客の記憶に残るブランド、および、高いブランド価値創出のための顧客中心ブランド戦略を導出する。
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Koenigsberger の既約性定理
西岡 啓二 慶應義塾大学環境情報学部教授 線形微分作用素に関するG. Floquet の定理は多項式環論におけるEisenstein の定理の類似である。この事実はL. Koenigsberger によって指摘されたことである。彼はTaylor 展開を用いて既約性を研究した。このノートでは、議論が局所的であることを強調することによって、古典的な結果を統合する。
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『ある唯物論的思想家からの教訓:倫理と政治のホッブズ的省察』
評 渡邉 悟史 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程