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KEIO SFC JOURNAL Vol.22 No.1

2022.09 発行

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追悼文

中山俊宏さんとSFC

 
自由論題投稿論文
  • [研究論文]

    アメリカ軍の多様性の受容と社会的要求 -ウェストポイントのマイノリティ

    星野 大輔(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程

    本稿は、1970年代以降のアメリカ陸軍士官学校ウェストポイントを通して、アメリカ社会が軍に求めたマイノリティ受容と軍の組織文化との対立を考察するものであり、アメリカの社会的要求と軍の機能的要求の間の相克と均衡についての研究である。陸軍の象徴的存在であるウェストポイントは、社会の変化と政治介入に応える形で、人種やジェンダーを制度的に受け入れてきた。マイノリティの卒業生は、戦場で戦い機能的要求を満たすことで、ガラスの天井を破り、軍における男らしさのアイデンティティと機能的要求の再定義を牽引してきた。

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自由論題投稿論文
  • [研究論文]

    3D プリンターによるコオロギ飼育空間最適化の評価

    オオニシ タクヤ(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程)
    ジョヴァンニ イネラ(VCUarts カタール Master of Fine Arts in Design Studies 学部講師)
    小林 博人(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授)
    加藤 文俊(慶應義塾大学環境情報学部教授

     コオロギは未来の動物性タンパク質源として期待されている。今後コオロギの大量生産を実現する際、コオロギの好む最適居住空間の確立が求められる。その参考となる情報を得るため、一辺が9,11,13,そして15mm の4種類の切頂八面体充填フレームを3D プリンターを用いて制作し、それらに対するコオロギの選好性を検証した。その結果、最多となるコオロギの入居数は、最も細かい一辺9mm の飼育モジュールにおいて記録された。しかし、軽量化による産業上の利点を考慮すると、次点の一辺11mm の飼育モジュールがコオロギ養殖産業における至適条件であることも示唆された。

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自由論題投稿論文
  • [研究論文]

    横溢する言葉 -フランケティエンヌの螺旋主義、その輪郭についての試論

    浅野 千咲(東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻博士後期課程)

     ハイチで1970年代初頭から提唱されはじめた螺旋主義、その中心人物であるフランケティエンヌは、今なお螺旋の軌道に乗って駆け続けている。螺旋主義の特徴の1つは、作家たち自身から発された王道の理論が存在しないことであり、そのために螺旋主義は目指すところや具体的方略が不透明なまま、私たちの前に提示される。本稿は現代ハイチ文学のかなめ石としてフランケティエンヌを捉え、彼の言葉から立ち現れる螺旋主義の輪郭と、そこへ駆り立てられる動機を考察する。

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自由論題投稿論文
  • [研究論文]

    同人誌にみる物が住まう展示会場 -二次創作が場所形成に果たす役割

    ラスト エステル(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程)

     展示空間はしばしばその姿を変えていくが、これまでは主にキュレーターと観客の視点から考察されてきた。これに対し、本論文は物それ自体のパースペクティブをとるべきことを提案し、日本のポップカルチャーの影響を受けた同人誌、特にゲーム「刀剣乱舞―ONLINE―」と関連作品展開についての女性ファンによる二次創作に着目する。そこでは日本刀が展示空間に住まう社会的存在として想像されており、展示を人間と非人間のコミュニケーション空間として想像すべきという意味で、展示の空間的性格に関する議論に新しい視角を導入する。

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自由論題投稿論文
  • [総説・レビュー論文]

    リフレクションを用いた新人看護師教育に関する文献レビュー

    土肥 由莉(東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻精神看護学分野修士課程)
    野末 聖香(慶應義塾大学看護医療学部教授)

     リフレクションを用いた新人看護師教育の内容と効果を明らかにするため、医学中央雑誌を用いたデータベース検索により抽出された51文献から、研究目的に合致した7文献を選定し、レビューを行った。ジャーナルやノート、ビデオなどの多様なリフレクション用ツールを用い、感情に焦点を当てた質問や開かれた質問で思考が進むよう促し非指示的に関わることで、新人は自分の限界や強みに気づき否定的感情が軽減して意欲が高まり、先輩看護師は新人や自己への理解を深め、指導における自信を獲得していることが分かった。

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自由論題投稿論文
  • [実践報告]

    臨地実習における学生の成長に影響を及ぼす学習支援者の関わりに関する研究

    上ノ山 千尋(東京大学医学部附属病院看護師)
    吉儀 知夏(虎の門病院看護師)
    宮脇 美保子(慶應義塾大学名誉教授)

     本研究では、学習支援者の関わりを学生の語りから明らかにし、臨地実習における学習支援者の関わりについて検討した。看護系大学4年生6名を対象に実習における学習支援者との関わりについて半構造化面接を実施した。その結果、参加者は学習支援者との関わりを〈成長につながった関わり〉と〈成長につながり難かった関わり〉として認識していた。学習支援者による関心をもった関わりが臨地実習における学生の成長に強い影響を及ぼしていることが示唆された。

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