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古くて新しい総合政策学

KEIO SFC JOURNAL Vol.21 No.1 古くて新しい総合政策学

2021.09 発行

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特集

古くて新しい総合政策学

特集座談会
  • SFCは滅びてもいいし、総合政策が滅びてもいい。黙ってベストを尽くせ。

    阿川 尚之(慶應義塾大学元総合政策学部長)
    河添  健(慶應義塾大学元総合政策学部長)
    國領 二郎(慶應義塾大学総合政策学部教授 / 元総合政策学部長)
    進行: 土屋 大洋(慶應義塾常任理事 / 慶應義塾大学前総合政策学部長)
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特集招待論文
  • [総説・レビュー論文]

    政策科学の展開と変容 -総合政策学への示唆

    秋吉 貴雄(中央大学法学部教授)

    本稿の目的は、公共政策学の中核に位置する「政策科学」の展開と変容について考察し、日本で誕生した総合政策学への含意を検討することである。第二次世界大戦後に提唱された政策科学は1970年代から公共政策学として制度化された。しかし、合理的政策決定の問題が認識され、1980年代後半から方法論的転換が図られ、ポスト実証主義をもとにした政策科学が提唱された。この政策科学の展開から、総合政策学に対して、①問題構造分析手法の開発、②多元的政策分析手法の開発、③政策決定システムの検討、といった課題が示唆される。

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  • [研究論文]

    総合政策学 -30年の回顧と展望―理念、研究、改革実践の創発的発展

    上山 信一(慶應義塾大学総合政策学部教授)
    西村 歩(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程)

    「総合政策学」は慶應義塾大学SFCの新学部設立構想を機に生まれた。その理念はこの30年間、研究者を現実課題に近接させ、行政機関の改革に参画させ、ケーススタディ研究の充実をもたらした。また当初の目論見どおりに政策研究を旧来アカデミズムの様式から解放し、実践的、学際的、将来志向に変えた。今後の総合政策学は、理論と実践知の蓄積を手掛かりに、あたかも量子力学が宇宙の姿を9次元で描くような視点―すなわち「社会課題」「ステークホルダー」「場所」「政策ライフサイクル」「風土」「分野」「政策手段」「データ」等の多元的視点―の上にたって複雑化する政策課題のダイナミズムを「総合的」に解析する“仕事”に向かうべきである。

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  • [研究論文]

    コミュニティと総合政策 -その変遷と今日的課題

    宮垣 元(慶應義塾大学総合政策学部教授)

    総合政策という語からコミュニティという概念はあまり想起されないかもしれないが、コミュニティの概念もその政策も、分野横断的にアプローチされ、課題に対し規範的に意思決定されてきたという点できわめて総合政策的であるといえる。本稿では、この多義的な概念を確認しつつ日本のコミュニティ政策を振り返るとともに、近年ヒューマンサービスの諸領域で期待されている役割とその可能性、課題について考えてみたい。

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  • [研究論文]

    日EU関係における「中国ファクター」

    鶴岡 路人(慶應義塾大学総合政策学部准教授)

    中国の台頭は国際関係全般の大きな関心事となり、それへの対応が、日EU関係にも影響を及ぼしている。いわゆる「中国ファクター」であり、この推移と背景を分析することが本稿の目的である。「中国ファクター」は、日EU関係の「阻害要因」だった時期・側面もあれば、「促進要因」となる時期・側面もある。全般としては、従来は日欧間の対中認識ギャップが大きかったことから阻害要因の要素が強かったものの、欧州における対中認識の悪化により対中認識ギャップが縮小し、促進要因としての比重が高まっている。

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  • [総説・レビュー論文]

    政府・中央銀行とデジタル通貨 -通貨覇権をめぐる連鎖現象の考察

    藤井 彰夫(日本経済新聞社論説委員長)

    2008年の世界金融危機以降に広がったデジタル通貨。ビットコインやフェイスブックのリブラ構想は、世界の政府・中央銀行に衝撃を及ぼした。中国はデジタル人民元の開発を加速し、それが世界の中央銀行をCBDC(中銀デジタル通貨)の実験へと突き動かした。デジタル通貨をめぐる連鎖現象は21世紀の通貨覇権をめぐる競争でもある。

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特集投稿論文
  • [実践報告]

    屋久島町口永良部島とSFC生の10年間を辿る -当事者として関わる大学生の実像

    冨永 真之介(総務省職員/慶應義塾大学SFC 研究所所員)

    慶應義塾大学長谷部葉子研究会に属する屋久島町口永良部島プロジェクトは2011年から10年にわたり、鹿児島県屋久島町口永良部島と継続的に協働し、地域と大学の資源を活かし合う関係性を構築してきた。本実践報告では、その活動の経緯を紹介すると同時に、中長期的なフィールドワークを実施してきた大学生の当事者性に焦点を当てながら、現地の島民と当事者性を交差させることが、継続的な活動に結びついていることを提示する。

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自由論題投稿論文
  • [研究論文]

    日本に暮らすムスリム第二世代 -当事者の語りから見える葛藤の様相

    クレシ 好美(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程)

    1980年代以降の外国人ムスリムの流入を経て、国内にもムスリム家庭が形成されている。そこに誕生する第二世代は幼い頃からイスラームの価値観のもとに生育するが、中には、学童期から差異を意識し続け家庭の価値観と級友らのそれとのギャップに苦しみ、青年期にはムスリムである属性にどう向き合うべきか悩みながら「自分とは何者か」の問いに答えを見つけようと懊悩する者もいる。マイノリティの存在であることを意識し成長するかれらがどのような葛藤を抱えいかにして乗り越えようとするのかを、当事者の語りから考察する。

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  • [研究論文]

    政策協働の過程で町内会が果たす機能 -気仙沼市における協議会型集団移転事業の事例から

    高橋 侑也(慶應義塾大学総合政策学部4年)

    日本における町内会や自治会は、これまで市町村による地方自治を下請け的に支えてきた。まちづくり協議会のような政策協働の担い手となる住民組織が各地で発足しても町内会と行政との関係性は変化しなかった。  本稿では、東日本大震災後の気仙沼市大沢地区にて住民協議会と市による政策協働を通して高台移転事業が導入された事例を取り上げる。この事例の政策過程分析を通して、集落内での関心が高い政策テーマでは地域外の専門家が参加することで町内会を中心に政策協働が形成されうることを示す。

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