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- Vol.16 No.2
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「田園回帰」の実相
小田切 徳美 (明治大学農学部教授) 若者を中心に、都市住民の農村への関心が高まっており、農村への移住に関心を持つ人たちは決して少なくない。この大きなトレンドは「田園回帰」と呼ばれている。私たちはこの若者の意識変化に注目すべきであろう。この50 年で農村の過疎化と東京への一極集中が進んだ。活発化する「田園回帰」の現実は、私たちの社会の大きな岐路を示唆している。今までの半世紀に対して、新しい半世紀には、どのような社会を創造していくのか、その国民的議論が求められている。
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まちづくりの持続可能性を支えるもの
西村 浩 (株式会社ワークヴィジョンズ代表取締役) 人口減少・超高齢化時代に突入し社会の価値観が大きく変わりゆく中で、全国地方都市の疲弊ぶりが著しい。各地でまちづくりとか地方創生という合い言葉のもと、行政や市民が様々な取り組みを実践しているが、効果が一時的だったり、周りに波及せず限定的だったりと、なかなか成果が出ていないのが現実である。まちづくりには当然時間がかかる。そのため、そこに求められるのは持続可能性である。本論は、その持続可能性を担保するための要件を探ることを目的として、岩見沢市・佐賀市・喜多方市でのまちづくりの事例を分析し、人づくり・動機づくり・教育の3 つのポイントを整理した。
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「ご近所イノベーション学校」のプラットフォームデザイン -地方創生に向けたこれからの都心型コミュニティのありかた
坂倉 杏介 (東京都市大学都市生活学部准教授) 地方への人口移動を増やすには、多様な人々が協調的に住み働くことのできる都市型コミュニティの形成が必要だ。東京都港区と慶應義塾大学による「ご近所イノベーション学校」は、行政の地域機関を拠点に大学の積極的支援によって市民のつながりと主体的活動を促進する事業である。その特徴は「芝の家」、「ご近所ラボ新橋」、「ご近所イノベータ養成講座」という機能を補完する複数のプラットフォームの連携である。本論考では、その効果の検証と事業連携が機能する要因を考察することで、コミュニティプラットフォームのデザイン指針を示す。 SFCJ16-2-03.pdfをダウンロード
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大学と地域現場との協働(キャリア教育)のあり方 -成城大学と群馬県明和町の連携事例を中心に
正村 あづさ (慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程) 地域活性化に際して、地域は大学から「知」を求める一方、大学に対して「実践の場」を提供する。多くの大学においては、多様な主体の相互作用を特徴とする「域学連携」活動をキャリア教育に導入している。本稿では、成城大学と明和町との連携活動を例に、コミュニティデザインのあり方とその課題を考察した。その結果、(1) 小さな町と小規模大学の少人数の授業においても、公式に協定を締結することにより活動が認知され周囲の協力が得やすい、(2) 町内・学内ともに小規模な組織でありながら多くのステークホルダーが存在する。そのハブとなるキーパーソン(SA)の存在がプラットフォームを活性化させる、(3) 町の内発的発展を目指し学生が町に通い、課題解決に向け議論を繰り返すことが、学生自身の就業力向上につながっていることが判った。
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労働争議処理手続きの制度化にみる中国共産党の適応能力
内藤 寛子 (慶應義塾大学SFC 研究所上席所員) 中国共産党一党体制の強靭性は現代中国政治研究の主要な問題関心であるが、それが生み出された具体的なプロセスを検討した研究は少ない。本論文は、労働争議処理手続きの制度が設けられた経緯とそれが改正された過程を追跡し、中国共産党の適応能力を労働争議処理手続きの制度の変遷から解明した。本論文は、労働争議処理手続きの制度が、社会の安定化を目的として、非合法な労働争議を制度内で処理できるよう、また当事者の要求が政治化しないよう調停と仲裁の機能を重視し裁判利用を制限するような設計となったことを明らかにした。
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自分の生き方に自信のない母親 -規定要因と考察
植村 理 (慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程) 国際比較が可能な調査において、日本の学齢期の子どもの自尊心の低さが顕著であることはよく知られているが、その一部がその子の母親自身の自己認識に影響を受けているとの見方が強い。このことから、本稿では、小学生の子どもを持つ母親に対するアンケート調査の個票を用いて、母親が自分の生き方に対して「自信」を持っているかどうかが、どのような社会的・経済的要因によって規定されているのかを実証的に明らかにすることを試みた。分析の結果、社会・経済的な環境を制御した後でも、母親自身の将来展望に代表されるような母親自身の社会関係資本が母親の「自信」に影響していることが明らかになった。
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小児のアトピー性皮膚炎におけるプロバイオティクスの維持・改善効果についてのメタアナリシス
山本 優理 (慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程) 杉山 大典 (慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室専任講師) アトピー性皮膚炎(Atopic dermatitis; AD) はプロバイオティクスの効果が期待される慢性的アレルギー疾患である。本研究では小児AD におけるプロバイオティクスの効果を明らかにするため、AD にプロバイオティクスで介入したRCT のSCORAD の変化量をもとにメタアナリシスを行った。結果、対照群とは差がない可能性を示したが、年齢と国を考慮したサブグループ解析では生後6 ヶ月以内の群はAD を悪化させた。以上より、プロバイオティクスは小児ADの維持・改善効果があるとは一概に言えないと結論づけた。
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精神分析的心理療法におけるインターサブジェクティブな交流に基づいた分析 -日本文化における‘先取り型罪悪感’の発見に向けて
森 さち子 (慶應義塾大学総合政策学部准教授) 本稿では、日本人であるクライアントとセラピストとの間に生じた、罪悪感をめぐる精神分析的心理療法の交流を、間主観的な観点から分析した。それによって筆者は、日本の精神分析において論じられてきた2種の罪悪感、“処罰恐れ型”と“許され型”に加え、 極めて日本的と言える“先取り型”罪悪感を見出した。セラピー過程のある局面において、セラピストはクライアントに罪悪感を抱き、思わず自分から謝った。これを契機に心理療法が展開した。二人の間のどのような相互交流がこのようなエナクトメントに結びついたのかを明らかにした。
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ミレニアルズ世代と近隣地区の変遷 -新たな世代によるジェントリフィケーションへのアプローチ
松本 奈何 (慶應義塾大学環境情報学部講師(非常勤)/メリーランド大学カレッジパーク校博士課程) 本研究ノートでは、世代によるジェントリフィケーションへのアプローチの違いについて現在進行中の研究を報告する。アメリカで最も多様であり教育レベルの高い世代といわれるミレニアルズたちは、その住居選択および近隣でのコミュニティ形成などに対し、これまでとりあげられてきたジェントリファイヤーとは異なる意識を持っている。本研究ノートではアメリカのインナーシティのひとつ、ボルチモア市のグリークタウン地区の事例をとりあげ、そこに流入するミレニアル世代の新住民が持つ高い社会意識、多様性への支持などを示す。同時にかれらの意識の高さが実際の活動に結びついておらず、今後この世代がより多岐にわたるコミュニティ活動に参加することがインクルーシブな住居環境を形成するために重要になってくることを指摘し、今後の研究の可能性を提示した。
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