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「循環創造学」を目指して

KEIO SFC JOURNAL Vol.23 No.2 「循環創造学」を目指して

2024.03 発行

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特集

「循環創造学」を目指して

特集招待論文

    [総説・レビュー論文]

  • 消滅型生ごみ処理容器「キエーロ」と微生物叢の網羅的解析

    松本 信夫(キエーロ葉山代表)
    平野 理恵(ゴミフェス532(ゴミニティ)運営)
    黄 穎(慶應義塾大学先端科学技術研究センター(KLL)博士研究員)
    宮本 憲二(慶應義塾大学理工学部教授)

    地球は温暖化から灼熱化の時代へと入り、気候変動への抜本的な対策が必要となってきた。そのような状況の中、我々が排出しているごみを分別し、利用可能なものをリサイクルすることは不可欠である。一方で、焼却処分しているごみの内、約40%は生ごみであり、水分を多く含むことから焼却には多くのエネルギーを必要とする。そこで、生ごみを各家庭で処分できれば、エネルギーや二酸化炭素の削減の有効な解決策と考えられる。したがって、微生物により生ごみを消し去るキエーロは、生ごみ問題を解決する切り札と期待できる。
    DOI: 10.14991/003.00230002-0014

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  • [研究論文]

  • 地域住民間のつながりを増進する地域通貨の利用による主観的ウェルビーイングの向上効果の特定 -利用者の金銭観、自然とのつながり及び地域愛着に着目して

    保井 俊之(叡啓大学ソーシャルシステムデザイン学部学部長・教授)
    末吉 隆彦(クウジット株式会社代表取締役社長)
    江上 広行(株式会社URUU代表取締役社長)
    高尾 真紀子(法政大学大学院政策創造研究科教授)

     本研究は地域住民間のつながりを増進する地域通貨の利用者が、利用の前後で主観的ウェルビーイングをどう変化させるか、その効果を利用者それぞれの金銭観、自然とのつながり及び地域愛着との関連に着目しつつ特定することを目的としたものである。神奈川県鎌倉市にある、地域住民間のつながりを増進する地域通貨プラットフォームを実証フィールドとして実証実験を行った結果、筆者らは、地域住民間のつながりを増進する地域通貨の使用により、使用インセンティブの付与に関わりなく、利用者の短期的ウェルビーイングが有意に向上し、長期的ウェルビーイングの向上も有意傾向であることを明らかにした。さらに、特定の金銭観が利用者のウェルビーイングに負の影響を与え、自然とのつながり及び地域愛着はウェルビーイングと近いつながりがあることがわかった。
    DOI: 10.14991/003.00230002-0032

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  • [総説・レビュー論文]

  • 大型ペレット式3Dプリンタを活用したプラスチック資源循環の地域実践

    田中 浩也(慶應義塾大学環境情報学部教授)
    湯浅 亮平(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任講師)
    荒井 将来(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任助教)
    守矢 拓海(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科研究員)
    常盤 拓司(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授)
    青木 まゆみ(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任助教)
    益山 詠夢(宮城大学事業構想学群 准教授 / 慶應義塾大学SFC研究所上席所員)
    柚山 精一(エス.ラボ株式会社代表取締役 / 慶應義塾大学SFC研究所所員)
    橘 和子(エス.ラボ株式会社 / 慶應義塾大学SFC研究所所員)
    釡井 正太郎(エス.ラボ株式会社 / 慶應義塾大学SFC研究所所員)
    高橋 昭人(株式会社放電精密加工研究所 / 慶應義塾大学SFC研究所所員)

     大型ペレット式3Dプリンタは、地域におけるプラスチック資源循環を支える中核技術となる可能性を有する。筆者らのグループは、東京2020オリンピック・パラリンピックを契機として研究開発した新技術やノウハウを活用して、鎌倉市を舞台に地域における応用可能性を探索している。本論文では、その可能性や課題を整理し、今後の方向性をまとめる。
    DOI: 10.14991/003.00230002-0048

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  • [研究論文]

  • 家庭ごみ排出量の細粒度リアルタイムセンシングアーキテクチャ

    中澤 仁(慶應義塾大学環境情報学部教授)
    陳 寅(麗澤大学准教授)
    黄 文浩(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程)
    三上 量弘(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程)

     家庭ごみ排出量を細粒度にデータ化するリアルタイムセンシングアーキテクチャを提案し、神奈川県鎌倉市、横須賀市、藤沢市での実証を報告する。同アーキテクチャでは、清掃車の後方カメラ画像を活用し、深層学習技術を用いてごみ袋を検出、計数し、1袋ごとの収集地と収集時刻を把握できる。これにより、家庭ごみ排出量のリアルタイム把握や可視化が可能となり、収集業務の時空間最適化へ向けた、データに基づく検討が可能となった。今後の展望として、様々な種類のごみや資源の計量に関する技術拡充や、スケーラビリティ向上に取り組み、2025年までに技術の完成を目指す。
    DOI: 10.14991/003.00230002-0068

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  • [研究論文]

  • 日本における循環経済への移行障壁(CEバリア)の特定

    塚原 沙智子(慶應義塾大学環境情報学部准教授)

     天然資源の消費に基づくリニアな経済システムから、自然資本を維持・回復させながら人類の幸福を維持する循環経済システムへの移行は、世界の主要な政策トレンドとなっている。日本でも、CEに関連する政府ビジョンが打ち出され、CE型ビジネスモデルの構築や産官学民の共創拠点創出への期待が高まっている。このような中、学術的にも、CE移行を妨げるバリアを特定し、日本の構造的な問題を議論することが求められる局面にある。本論文は、欧州を中心としたCEバリア研究を参考に、国内の文献調査やインタビューを通じ、日本固有のCEバリアの特定を試み、課題を分析するとともに、政策の役割について論じる。
    DOI: 10.14991/003.00230002-0090

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  • [総説・レビュー論文]

  • 循環創造と建築 -新たな循環社会像“Vortex economy®”の提案

    佐藤 大樹(大成建設株式会社技術センター課長)
    羽角 華奈子(大成建設株式会社技術センター課長代理)
    出口 亮(大成建設株式会社一級建築士事務所シニアアーキテクト)
    古市 理(大成建設株式会社一級建築士事務所室長)

     総合建設業は、多種多様な専門会社とチームを組み、役割をつなぎ合わせて社会インフラを建造する。このビジネスプロセスには、サーキュラーエコノミーの実現に向け、建築をハブとした新しい循環の創造に応用できる可能性がある。本報では、サーキュラーエコノミーの概念を拡大し、地域において産業やセクターを超え資源が循環する新しい循環社会像「Vortex economy」を提案し、そこでの建築の役割について、木材の循環モデル形成を先行事例として考察する。また、Vortex economyの実現に必要な建築の在り方を示す。
    DOI: 10.14991/003.00230002-0114

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  • [総説・レビュー論文]

  • 街を資産として次世代へ引き継げるか? -ストック型社会構築への挑戦

    谷川 寛樹(名古屋大学大学院環境学研究科教授)

     日本の物質ストックは次世代に資産として残すことができるだろうか。気候変動や少子高齢化はすでに進行している。遠い未来と思われていた2050年の社会の絵姿を描ける準備はできつつある。本稿では、次世代を豊かにする資産を多く蓄積するストック型社会の概念について整理し、社会を支える物質ストックに関する既存研究の成果に基づき、身近なところからストック型社会の構築について考察した。
    DOI: 10.14991/003.00230002-0128

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自由論題投稿論文

    [総説・レビュー論文]

  • AI原則の国際的な潮流と日本のAI原則の特質 -今後の見直し検討に向けた政策上の示唆

    畠山 記美江(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任助教(有期))
    大磯 一(慶應義塾大学SFC研究所上席所員)

     AIに関連する新たな問題への対応のため官民を問わず国内外の様々な団体から公表されてきた非拘束的な指針(いわゆるAI原則)については、各原則中で言及される項目の種類に一応の合意があるとする見解と、見かけ上の合意に過ぎないとの見解の両方が存在する。本研究では主に、総務省のAI原則について欧州評議会の人工知能特別委員会の分析結果を用いて国際比較を行い、同一に見える項目にも、安全保障を含む緊急事態対応や持続可能性等、国際的な議論との差異があることを示す。今後の政策検討では、日本独自の点の訴求と、差異への対応の双方が課題となり得る。
    DOI: 10.14991/003.00230002-0142

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  • 自由論題投稿論文

      [研究論文]

    • あるニューカマー研究者におけるアイデンティティの葛藤、そして折り合いに関する自伝的ナラティブ

      徐 銀永(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程)

       本稿を通して韓国系ニューカマーである筆者は、自分が持つ複数のアイデンティティが葛藤し、折り合いをつけていく過程について考察を行った。歴史や政治、そして文化といった巨視的言説によって表象される自己と自ら認識する自己の間でアイデンティティの葛藤を経験した筆者は、個別的かつ微視的関係によるナラティブを通して自らのアイデンティティに関する問いに答えることができた。そして、その個別的で小さなナラティブを認識した際、マジョリティーとマイノリティーや日本人と移民といった二項対立的な関係が解消され、「sameness」を基とする安全で新たな空間が生まれることを確認した。最後に、筆者の経験から得た知見を通して日本における移民関連の研究に対し新しい視座の提供を試みた。
      DOI: 10.14991/003.00230002-0164

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