慶應義塾大学湘南藤沢学会

KEIO SFC REVIEW


No.4 『特集:データサイエンス』

発行 : 1999年4月1日

CONTENTS
第4号特集のねらい/片岡 正昭(p.4)

第1部 データサイエンス登場 第2部 データサイエンスの世界 寄稿 企業成長と経営資源/小林喜一郎(p.151)

ABSTRACT
第4号特集のねらい
    今号の特集「データサイエンス」のねらいについて、編集幹事を務めた河添 健総合政策学部助教授と片岡正昭総合政策学部助教授が説明する。
    [ABST#4-1]
第1部 データサイエンス登場
  • 数理・統計教育の新たな試み/総合政策学部助教授 河添 健
    このデータサイエンス(以下DS)特集号は、その重要性と可能性を広く世に問うものですが、それと合わせて現在の数理・統計教育に対する湘南藤沢キャンパス(SFC)の新たな提言です。どうしてDS教育に至ったか、その経緯を簡単にお話ししましょう。(論文執筆者による要約)
    [ABST#4-2]
  • データサイエンス教育の理念と成果 ― 慶應SFCの新たな挑戦/総合政策学部助教授 片岡正昭
    慶應SFCのデータサイエンス分野は、『知的創造のための思考の道具箱』というキャッチフレーズのもと、1997年度のカリキュラム改革でSFCの第3の基礎教育分野としてスタートを切った。分野の発足から2年が経過した現在、その理念とカリキュラム構成を明確にし、到達点と今後の課題を明らかにしておくことは、とても有意義である。本稿では、SFCにおけるデータサイエンス教育の理念とカリキュラム構成を説明し、成果を概観しつつ将来の課題を展望することとする。(論文執筆者による要約)
    [ABST#4-3]
  • 座談会 『数理・統計教育の現状と今後』
    総合政策学部助教授 片岡正昭、環境情報学部教授 西岡啓二、東京大学大学院数理科学研究科教授 岡本和夫、東京大学大学院総合文化研究科・共用学部教授 松原 望
    司会:総合政策学部助教授 河添 健

    現在、小学校から高校・大学まで「算数嫌い」「数学嫌い」が増え、一方で1998年11月に発表された第6回改訂にみられるように、「ゆとり」を訴える学習指導要領の下、算数・数学でも教科内容が大幅に削られている。 現在の教育の何が問題なのか、そして本当に必要とされる「学力」とは何か。数理・統計教育についての議論を中心に日本の教育の現状と今後の課題について、数理・統計教育の第一人者が初等中等教育から社会人教育まで幅広く論じる。(論文執筆者による要約)
    [ABST#4-4]
  • SFCのデータ分析教育/総合政策学部非常勤講師 加藤 剛
    慶應湘南藤沢キャンパスでは、1997年度に実施した履修課程の改定で、新しい考え方にもとづいた統計入門科目「データ分析」を設置しました。数式の使用と理論の説明を極力抑え、代わりに統計処理ソフトウェアを利用して、統計的分析手法を視覚的、体験的に理解してもらうことを、この授業は目的としています。伝統的な統計入門教育は、数式を用いた理論の説明を板書で行うことが一般的な形です。ところが、この形が、有用で社会的にも必要とされている統計的分析手法の学習人□を増やす点で障害になっているのではないかという反省が、データ分析の設置の背景にあります。本稿は、データ分析の開設当初からの授業担当者による、現場からの報告です。(論文執筆者による要約)
    [ABST#4-5]
  • データサイエンスの社会人教育/筑波大学大学院社会工学系助教授 椿 広計
    社会人データサイエンス教育は、知識を実質有るものとして固定しようという強いモチベーションのために、教育導入期における簡便なソフトウェア、合理的かつ有用なデータ解析戦略、実務と直結した解析体験を与えれば、容易に自己研鑽へ誘導することが可能であり、一般大学教育よりは明らかに効率が高い。しかし、一方で職業統計家レベルに近い社会人層の知的欲求を満たすような教育体系を与えるためには、担当教員が常に現時点で最高水準のデータ解析戦略体系とは何かを問い続ける必要がある。これらの特徴を明らかにするために、筆者の個人的意見や体験に過ぎないが、筑波大学東京地区夜間社会人大学院におけるデータサイエンス教育の理念、実態などを紹介する。(論文執筆者による要約)
    [ABST#4-6]
  • 学生優秀論文『経済成長』 /日本銀行調査統計局経済調査課景気分析グループ 中室牧子
    筆者が、慶應義塾大学環境情報学部に在籍していた折に、卒業論文として作成したものを加筆・修正したものです。本論を作成するにあたっては、多くの尊敬すべき先生方にご指導を頂きましたが、とりわけ総合政策学部の竹中平蔵教授のご指導によるところが大きく、改めて感謝の言葉を申し上げます。なお、ここで述べられた意見は筆者個人に拠るものですので、所属する機関等のものではないことを予めお断りしておきます。(論文執筆者による要約)
    [ABST#4-7]
第2部 データサイエンスの世界
  • 福祉のまちづくり条例の波及/政策・メディア研究科後期博士課程 伊藤修一郎/総合政策学部助教授 片岡正昭
     「福祉のまちづくり条例」は、都市の総合的なバリアフリー化を推進し、高齢者や障害者を含むすべての人が社会参加できるまちの実現をめざす条例である。先駆的自治体の試行錯誤とハートビル法の影響を受けて、この条例は全国に波及した。この政策波及の中で条例を採用していった地方自治体の政策決定はどのように行われたのだろうか。データサイエンスと事例研究を有機的に組み合わせて、地方自治体の政策決定要因を明らかにするとともに、空間的・時間的に広がる政策派及現象を動的にとらえる研究手法としての計量的分析・質的分析の長短及び戦略的利用を論ずる。(論文執筆者による要約)
    [ABST#4-8]
  • 産業連関表と産業連関分析について/総合政策学部助手 王 在
    自由経済体制のみならず、社会主義経済体制においても、「産業連関表」というデータ・ベースを用いた産業連関分析は、産業社会の実態分析や将来予測に広く応用されている。今日では、情報化の急激な進展により、今まで難関であった産業連関動学モデルや国際産業連関モデルが再び注目されており、新しい視点であらためて開拓されている。新しいモデルによって得られる研究成果がいつでも、どんな時代でも、real timeに世の中の変化に答えることができると強く期待されている。本稿では、産業連関表の基本概念と産業連関分析の基本モデルを概観したうえで、実例を用いて産業連関分析の実用性を示している。(論文執筆者による要約)
    [ABST#4-9]
  • 政策モデルとその応用/総合政策学部教授 小坂弘行
    計量経済モデルを経済政策に応用する場合、3つの方式がある。第1がマルシャック方式、第2がティンバーゲン方式、第3が最適化方式であり、それぞれの方式について特徴をのべる。第1の方式が最もよく利用されているが、政策の背後にある機構を描出しながら政策問題を論ずるためには第3の最適化方式が望ましいことを強調したい。(論文執筆者による要約)
    [ABST#4-10]
  • 内容分析の可能性と限界/総合政策学部教授 伊藤陽一
    メディア内容を客観的・系統的に分析する技術としての内容分析法の歴史は古いが、その商業化・実用化、一般への普及は遅れていた。しかし近年、民間調査機関やPR会社が常時マスコミの内容析を行い、その結果を定期的に公表するようになっている。これによって、マスコミの内容分析のような大量のデータを扱う内容分析に関する限り、分析手法の標準化が進んでいる。(論文執筆者による要約)
    [ABST#4-11]
  • 「前」「後」「左」「右」の意味 ― 認知心理学的アプローチによる考察 ― /環境情報学部専任講師 今井むつみ、環境情報学部教授 石崎 俊
    マルチメディア技術の進歩によって遠方にいる人同士がバーチャル空間において自然言語を用いてひとつのオブジェクトを操作することが現実的な話となった。しかしここでネックとなるのが自然言語における曖昧性、特にオブジェクト操作に必須な空間関係を表す表現の曖昧性である。本論文ではこの問題の解消のための第一歩として自然言語での空間表現にどのような曖昧性が含まれているのか、また、その曖昧性はどこに起因するものなのかを認知心理実験を通して検討する。マルチメディア技術の進歩によって遠方にいる人同士がバーチャル空間において自然言語を用いてひとつのオブジェクトを操作することが現実的な話となった。しかしここでネックとなるのが自然言語における曖昧性、特にオブジェクト操作に必須な空間関係を表す表現の曖昧性である。本論文ではこの問題の解消のための第一歩として自然言語での空間表現にどのような曖昧性が含まれているのか、また、その曖昧性はどこに起因するものなのかを認知心理実験を通して検討する。(論文執筆者による要約)
    [ABST#4-12]
  • 医療のQOLとデータ解析/SAS Institute Japan 統計解析研究室室長 岸本淳司
    がんや糖尿病に対する治療の効果の評価にQOLが用いられるようになってきている。 QOLは本質的に多次元であり、あいまいさを含むので測定が難しい。信頼性と妥当性を満足する調査質問紙を設計し、個々の患者さんのQOLを的確に測定することが課題となる。そのために、心理学の分野で確立されたデータ分析の方法論が活用されている。(論文執筆者による要約)
    [ABST#4-13]
  • 図書館 ― 資料・情報・データのロジスティックス/環境情報学部教授 澁川雅敏
    私たちは、私たち自身を含め、それを取り巻く環境のなかで生きている。環境の内容は森羅万象である。情報・データは、森羅万象を写している。私たちは環境のなかで生きるために森羅万象について知らなければならないが、情報・データを通じてそれを知ることができる。いま、厖大な量の情報・データは資料に運載されて、私たちとは独立して存在している。図書館は、環境のなかで適正に生きることができるように、私たちの今後に意味ある行動原理をその無数の情報やデータのなかから導きだすのをサポートするロジスティックスとしての役割を担う。(論文執筆者による要約)
    [ABST#4-14]
  • マルチメディアデータを対象とした感性データベースシステム/環境情報学部教授 清木 康、筑波大学電子・工学系工学研究科 吉田尚史、筑波大学電子・情報工学系助教授 北川高嗣
    データベースおよびデータベースシステムを対象とした研究分野では、データベース設計、システム設計の方法論として、過去において、関係データベース、演鐸データベース、オブジェクト指向型データベースなどデータモデルが提案され、それらを対象とした多くの研究が行われてきた。近年、ネットワークの広域化、データのマルチメディア化に伴い、この研究分野への関心は、広域ネットワーク環境におけるマルチメディアデータを対象とした意味的あるいは感性的情報検索・統合システムの実現に向けられている。本稿では、その実現を目指して我々が提案している意味的連想検索方式を適用した感性データベースシステムについて述べる。(論文執筆者による要約)
    [ABST#4-15]
  • モデリングシミュレイション支援系「あやめ」の開発/政策・メディア研究科後期博士課程 明田守正、政策・メディア研究科後期博士課程 山川総司、環境情報学部教授 有澤 誠
    データサイエンスの技法として、モデリングシミュレイションは人文社会系の研究にも有用である。われわれはオブジェクト指向モデリング支援システム「あやめ」を、コンピューターの専門的な訓練を受けていない利用者をターゲットとして開発した。あやめは「3Dペン」と「ギア」と呼ぶ、特徴的な制御子をインタフェイスに採用したオブジェクト指向モデル作成トゥールである。作成するダイアグラムを多様な視点で見ることも可能なトゥールとして、あやめの意義がある。(論文執筆者による要約)
    [ABST#4-16]
  • データサイエンスの環境技術への応用 ― 電気自動車への応用を中心として ―/環境情報学部教授 清水 浩
    データサイエンスの応用分野の1つとして環境技術、とくに電気自動車の開発に焦点を当てる。その開発においてデータサイエンスは車体構成技術、車体の設計、性能評価、計測の各分野に応用されている。車体構成技術ではモーターと車体全体の制御に生かされ、また、車体の設計では車体強度を求めるための構造解析、適切なサスペンションを構成するための運動解析、車体全体の設計図面の作成に用いられている。性能評価では加速性能、最高速度、エネルギー消費などのシミュレーションに利用され、計測では設計値が予定どおりに得られているかどうかを確かめるために使われている。これらの例をもとにデータサイエンスの広がりに理解をつなげる。(論文執筆者による要約)
    [ABST#4-17]
  • 神経細胞数データベース解析に基づく脳の成長モデルとシミュレーション/政策・メディア研究科後期博士課程 原 淳子、環境情報学部教授 冨田 勝
    近年、生物学や医学生理学の様々なデータが膨大に蓄積されており、これらのデータベースをコンピュータで分析して生命/生体の仕組みを考える「生命情報科学」という新しい分野が確立されつつある。データベースをいろいろな統計学的手法を用いて分析すると、相関関係や全体的傾向など、ひとつひとつのデータからは決して見えない知見を得ることができる。そしてそれが時として生物学/生理学の常識を覆すような大発見につながる事もある。
    本稿では乳幼児の神経細胞数のデータベースを分析することによって「ヒトの脳神経細胞は生後も増加する」という斬新な事実を発見したShankleらの研究や、それらのデータベースを用いて、神経細胞や脳の振る舞いをシミュレートすることを目的としたSFC冨田研究室における研究プロジェクトを紹介する。(論文執筆者による要約)
    [ABST#4-18]
  • Musical Spectra: Fourier Signal Processing and Composition/環境情報学部助手 クリストファー ペンローズ
    本稿では、私がコンピュータ上で開発した音楽製作ツールの幾つかに分け入って見る事にする。以下で紹介するツール群は、音響信号のスペクトラムに手を加える事によって音響を操作するためのスペクトラル信号プロセッサであるが、まず典型的な時間領域での音響表現と、対応する周波数領域でのスペクトラムを比較しながら、コンピュータによる音響表現に関する概要を提示し、音響の周波数表現と人間の聴覚の間に存在する類似性について議論する。コンピュータによる視覚イメージ・プロセッシングのツールは、コンピュータ音楽のツールとコントラストを成す。これらのデザイン上の違いは、スペクトラル的な視点からの音響合成の様な、新しいオーディオ信号ツールの開発を促して来た。このテクニックを使ったシグナルプロセッサとして、適応的に二つの信号を組み合わせるether、音響のスペクトラル・サーフェスを他の信号に与えるpatina、そして、一つの信号で他の信号をマスクするburrowの3種類のプロセッサを解説する。さらに、臨界帯域に基づいた適応フィルタであるcritic、インターポレイトされた遷移を作り出すmorphorama、または2種類の音響間をモーフィングするmorph、そして2種の音響間でスペクトラムの交差を作り出すtaintの3種類のプロセッサも紹介する。(論文執筆者による要約)
    [ABST#4-19]
  • 体育・競技スポーツとデータ/環境情報学部教授 佐々木三男
    体育・競技スポーツは、計測記録、測定記録、競技記録、競技成績などの情報が重要なデータとなる。しかし身体運動を伴う体育と競技スポーツであるが、プロセスと最終目標が違う。したがってデータの活用法も大きく異なることから体育と競技スポーツの両側面から考察する。 体育におけるデータは、標準値または目標値として活用される。一方競技スポーツにおけるデータは、パフォーマンスまたはトレーニングの動向キャッチに活用される。さらにデータの分析・解析により戦略、戦術開発にも活用される。そして膨大で日々拡大されつつあるスポーツデータの管理・処理・提供は、コンピュータの活用に大きな期待が寄せられている。(論文執筆者による要約)
    [ABST#4-20]
寄稿
  • 企業成長と経営資源/経営管理研究科専任講師 小林喜一郎
    90年代になり企業を取り巻く環境が劇的な変化を遂げる中、日本企業も自らが道なき道を切り開きながら、世界市場で競争していかねばならない。即ち、企業はゴーイングコンサーンとして新たなる競争ルールを模索しながら、自らを変革し成長していく必要に迫られているのである。そこで当稿では、企業成長を達成するためには一体どの様な能力が求められるのか、という問題意識のもと、経営資源論の分析視覚をもってこのテーマにアプローチを試みた。 そこでます急速な成長を遂げた、日本を代表するエレクトロニクス関連企業の事例研究を行ない、一般仮説を導出した。続いて一部上場企業136社をサンプルとした定量分析を行なった結果、資源ストレッチ能力、名声構築力、戦略一貫継続力、といったマネジメント・レベルの企業能力、ならびに投下資本活用力、規模拡大力、といったオペレーショナル・レベルの企業能力が、企業成長 と最も重要な関係にあることが実証された。(論文執筆者による要約)
    [ABST#4-21]


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