慶應義塾大学湘南藤沢学会

KEIO SFC REVIEW


No.1 『特集:ディジタルユニバーシティからディジタル社会へ』

発行 : 1997年11月1日

CONTENTS
創刊にあたって [特集]ディジタルユニバーシティからディジタル社会へ
◇ 第1部 ディジタルユニバーシティとディジタル社会とは
第2部 技術論 第3部 社会論 第4部 メディア論 第5部 大学論

ABSTRACT
創刊にあたって
  • SFCとREVIEWへの期待 慶應義塾長 鳥居泰彦(p.4)
    SFCは、キャンパス開設からほどなく、大学改革のモデルと見なされるに至った。SFC Review第1号の巻頭を飾る言葉では、鳥居泰彦慶應義塾長(当時)が、大学教育のみならず、広く社会教育の場としてもSFCが注目を集めている理由をまとめるとともに、SFC Reviewの発行によって、SFCの研究者たちの多様な学問領域にわたる成果の全貌が明らかになるであろうという期待を語る。
    鳥居泰彦塾長に、SFCとREVIEWへの期待を語っていただく。
    [ABST#1-1]
  • 第1号特集のねらい 有澤 誠(p.5)
    今号の特集「ディジタルユニバーシティからディジタル社会へ」のねらいについて、編集幹事を務めた有澤 誠環境情報学部教授が説明する。
    [ABST#1-2]
[特集]ディジタルユニバーシティからディジタル社会へ
第1部 ディジタルユニバーシティとディジタル社会とは
  • 座談会 ディジタル社会への予感
    環境情報学部教授 斎藤信男/環境情報学部教授 岩竹 徹/総合政策学部教授 草野 厚/総合政策学部教授 小林栄三郎/環境情報学部教授 有澤 誠/常任理事・環境情報学部教授 高橋潤二郎

    既存の学問領域を超え諸学問の成果を横断的に再編成するという新しい概念に基づく研究教育の場として、総合政策・環境情報の2学部を有する湘南藤沢キャンパス(SFC)は1990年に開設された。 本座談会では、ディジタルユニバーシティの先駆けであるSFCの成果・現状・課題について、両学部の教授陣により忌憚のない討論がなされ、21世紀のディジタル社会への展望が語られる。この議論をたどることで、将来の大学と社会のあり方が見えてくる。(論文執筆者による要約)
    [ABST#1-3]
第2部 技術論
  • ディジタルメディアとその基盤技術 常任理事・環境情報学部教授 徳田英幸
    デジタルメディアのインパクトは、従来のアナログメディアでは実現することが難しかった、「いつでも」、「どこでも」、「だれでも」が「どのような情報」を「いかなる形式」でも利用できるディジタルメディア環境を実現できることであり、人々が空間や時間を超えて知識や体験を共有できることである。しかし、高度な知的ディジタルメディア処理を支える基盤技術に関しては、まだまだ多くの解決されなければならない課題が残されている。(論文執筆者による要約)
    [ABST#1-4]
  • ディジタルネットワークの将来 環境情報学部教授 村井 純
    人間が情報や知識を取り扱うために、数値の形態を利用するのがディジタルテクノロジーの基本である。このディジタル情報の恩恵を、コミュニケーション、知識や情報の共有や交換に用いるのがディジタルネットワークの目的である。そのディジタルネットワークの、少なくともプロトタイプを構築したのがインターネットのこれまでの役割だったといえる。本稿では、ディジタルネットワークの将来を考えるにあたり、このように発展してきたディジタルテクノロジーとインターネットのテクノロジーが、21世紀の社会の構築に、どのような課題を持ち、その課題を克服した結果としてどのような社会が訪れるかについて述べる。(論文執筆者による要約)
    [ABST#1-5]
  • ディジタルリポジトリの将来 環境情報学部助教授 清木 康
    ディジタルリポジトリを実現する基礎となるデータベースシステムの構成方式および利用形態に関する最近の大きな変化は、次の3項目にまとめられる。第1は、分散処理・並列処理技術を基礎とした分散・並列型コンピュータ・システムの普及に伴い、それらのシステムを対象としたデータベースの構成が可能になったことである。第2は、マルチメディア・データを含む高度なデータベースを実現するために、リレーショナル・データベースの次の世代のデータベースが研究開発されるようになったことである。第3は、広域の高速コンピュータ・ネットワークを介して多数のデータベースが接続された環境を対象としたマルチデータベース・システムの実現が重要となっていることである。
    データベースシステムは計算機システムの中の最も主要な機能の1つになり、計算機システムの中でデータベース処理の占める割合が大きくなっている。また、その応用分野は急速に広がってきている。ネットワーク・システム、分散処理システム、並列マシン、マルチメディア・システムなどの新しい計算機システムの普及が、データベースシステムの構成方式、および、利用形態に多大な影響を与えている。情報ハイウェイ時代と位置づけられる新しい世代、すなわち、広域コンピュータ・ネットワークとマルチメディアの世代においては、データベースシステムは、情報生成、情報獲得、情報抽出、情報編集、情報供給を実現する中枢の機能を提供する役割を担う。
    ここでは、広域のコンピュータ・ネットワーク環境におけるディジタルリポジトリとして位置付けらねるマルチデータベース・システムの構成とその利用環境について述べる。世界的規模で広がった多種多様なデータベース(マルチデータベース)の中から、適切かつ重要な情報を効率的に獲得するための方法論について述べ、この分野の今後の動向について展望する。(論文執筆者による要約)
    [ABST#1-6]
  • 物理変形可能な3次元非定型形状作成環境の研究開発
    環境情報学部教授 千代倉弘明/株式会社リコー研究開発本部ソフトウェア研究所第三研究室 原 孝成
    現在WWW(World Wide Web)上のコンテンツはマルチメディアによって表現力が豊かになり、特に仮想現実世界(Virtual Reality)を表現したコンテンツが注目されている。だが複雑な曲面形状は入力が困難で、データ量も大きく、3次元的な動きも定義しにくい。そこで本テーマは複雑な曲面を効率よく定義し、材質の物理法則に基づいて変形できる3次元形状モデラと、対話的に変形操作できるブラウザを開発する。これにより動く生き物や面白い仕掛けのあるコンテンツ作成が容易になる。(論文執筆者による要約)
    [ABST#1-7]
  • ディジタル生命情報 環境情報学部教授 冨田 勝
    生命の神秘と言ってしまえばそれまでかも知れないが、ひとつの受精卵が細胞分裂を繰り返して60兆の細胞からなるヒトの個体を作り上げる過程は、うまく出来過ぎていると言わざるを得ない。いつどの細胞がどのように振舞うかが綿密にプログラムされていなければならない。
    これらの情報は各細胞内のDNAに4つのアルファベット(A,T,G,C)の文字列としてコードされており、ヒトの場合全長約33億文字、情報量としては1ギガバイト(CD1枚分)である。本稿ではこのDNA言語の意味を情報科学的に解析する試みについて報告する。(論文執筆者による要約)
    [ABST#1-8]
  • 知の表現とディジタル技術 政策・メディア研究科教授 古川康一
    ディジタル技術は、ネットワーク技術の進展とともに社会の新たな情報化を引き起こしている。本稿では、ディジタル技術の本質を明らかにするとともに、知識のディジタル表現について、とくに専門家の判断の根拠となる暗黙知の言語化に焦点を当てて論じる。そして、そのような暗黙知が、専門家の判断の結果として得られたデータから自動的に抽出できることを例により示す。それは、多くの例からの帰納的な一般化の方法による。最後に、その手法を身体知の言語化に応用する試みについて言及する。(論文執筆者による要約)
    [ABST#1-9]
第3部 社会論
  • ディジタル社会の人間とその位置付け 環境情報学部助教授 渡辺利夫
    ディジタル社会が到来しつつある。視覚情報のディジタル化は、視覚情報を多量に、しかも高速に伝達させることを可能にすることにより、多チャンネル放送を促進させ、私たちは好きな時に好きな番組を見ることができるようになる。また、仮想空間の急速な発展は創造性開発に貢献するだけでなく、立体的な人工生命を誕生させ、私たちの生活に大きな影響を与えようとしている。
    私たちはディジタル社会の中でどのようにして生活してゆけばよいのであろうか。まず第1に重要なことは、五感による直接体験を通してしっかりとした認知構造を作り上げ、自分にあった情報の取捨選択ができるようにすることであり、そして第2に人と直接出合う機会を増やし、自我を発達させ心の管理が十分に行えるように自分のライフデザインを作ることである。(論文執筆者による要約)
    [ABST#1-10]
  • 技術と文化 総合政策学部教授 井上輝夫
    文化的な観点より見たディジタル技術の問題は、かつての社会変革のイデオロギーよりも浸透力の強い影響を与えてゆくと予想されることだ。しかし、マルチ・メディア技術であれ、双方向コミュニケーション機能であれ、現在見られる人間の現実と決して無縁であるというわけにはゆかない。人間の基本的にもっている欲求が新しい技術の上で再生産される可能性が高い。標準化や文化ヘゲモニーの問題や仮想現実の問題は過去を引きずって、必ずしも人間にとって利便性を向上させるだけとは言えない。重要なことは、いかにディジタル技術の可能性が新しく方向づけられ、多くの人々にとって扱いやすい創造の道具になりうるかどうかという点にかかっている。(論文執筆者による要約)
    [ABST#1-11]
  • ディジタル社会のコミュニケーション
    総合政策学部教授 深谷昌弘/環境情報学部教授 田中茂範/環境情報学部教授 鈴木佑治
    ディジタル社会は通信コミュニケーションを多彩化する。しかし、それがそのまま人間コミュ二ケーションの豊かさに直結するわけではない。情報に意味を付与したり情報から意味を創出して社会を豊かにするのは、情報機器の端末にいてコミュニケーション活動を展開する人間である。通信コミュニケーションの多彩化は、改めて人間コミュニケーションヘの関心を喚起し、これを生産的で創造的にする方途を探求する要請を高めるであろう。人間コミュニケーションは情報の伝達ばかりでなく直接・間接の意味の相互的編成を担っているところに特徴がある。このことは言語の働きと不可分に関連している。以下の三つの論文は、このような視点から、ディジタル社会における人間コミュニケーション、言語の多様性、英語の変容、をそれぞれ論じるものである。(論文執筆者による要約)
    [ABST#1-12]
  • ディジタル社会と数理のセンス 総合政策学部助教授 河添 健
    私は純粋数学者であり、コンピュータをその研究に使うことは全くない。読者の中には数学とコンピュータを近いものと感じ、このことを奇異に感じるかも知れない。本橋の目的は、「数学≠コンピュータ」を解説することである。数学とコンピュータの関係を回顧することから始まり、最近の流行である「複雑さ」の科学を批判することになる。といってもその研究を無駄だと言う訳ではない。そこにはもっと「数理のセンス」があるべきである。ディジタル社会のエンドユーザーを含めて、もっと「数理のセンス」を身につけて欲しいというのが私の主張である。その第一歩が「数学≠コンピュータ」の式を理解することである。(論文執筆者による要約)
    [ABST#1-13]
  • ディジタル社会における知的財産 環境情報学部教授 苗村憲司
    ディジタル化された情報が社会活動の中心的役割を果たす時代に向けて、価値のある情報の生産、その円滑な流通及び効率的な利用を可能とするため、知的財産権、特に著作権制度の役割を見直すことが重要な政策課題となる。長期的には、機械的複製行為を排他的権利の中核とする現在の著作権制度から、著作者の意思を重視する新たな理念に基づく制度に移行すべきだろう。しかし、当面は現行制度の部分修正によりマルチメディア著作物の権利処理を進めるのが現実的であり、これを支援する技術の開発と適用を推進することが必要である。(論文執筆者による要約)
    [ABST#1-14]
第4部 メディア論
  • エクリチュール、リテラシー、ライブラリー 検索からコレクションへ 環境情報学部助教授 奥出直人
    マルチメディアネットワーク環境の普及によって、巨大な1つのデータベースを電子的な方法で検索する近代的な図書館の時代は終わりを告げようとしている。新しいディジタルライブラリーでは、多様ないくつものコレクションがネットワーク上に存在して、お互いにコミュニケーションを行っている。コレクションはテキストや図版だけではなく、動画や地図、統計情報であってもよい。こうしたマルチメディアオブジェクトを統一的なWebインターフェイス検索できるのがディジタル・ライブラリーの姿である。慶應義塾はインターネットを使った情報検索・分析技術の蓄積と、全キャンパスを巡るメディアネットを活用して、ディジタル・ライブラリーを体験できる実験的な環境を立ちあげて、未来の知識のあり方を広く世の中に提示していくべきだろう。ディジタル・ライブラリー実験プロジェクトの中では、21世紀の図書館の姿、およびその図書館の利用方法と利用のための技術開発、さらには新しい図書館に収蔵される「新しい書物」の研究が行われる。(論文執筆者による要約)
    [ABST#1-15]
  • 21世紀につなぐ橋について 環境情報学部助教授 藤幡正樹
    芸術とコンピュータ技術との両分野にわたる観察をもとに、20世紀から21世紀へ持ち込むことが可能な「もの」、あるいは「こと」は何か、ということについてのさまざまな視点を設定し、思索する。
    例として、「たまごっち」という子供用のゲームをとりあげて、そこにひそむ技術と芸術性について考察し、私たちの現在の情報を把握する。さらにそうした発展の曲線を延長した時に見えるであろう未来について思索する。(論文執筆者による要約)
    [ABST#1-16]
  • ディジタル出版、放送とその将来 環境情報学部教授 有澤 誠
    電子メディアのジャーナリズムを中心として、ディジタルな近未来の出版や放送について展望する。ここでとりあげる事例の多くは、われわれのMMMプロジェクトの中で、電子新聞プロトタイプ制作に関する研究開発の成果として得られたものである。情報通信ネットワークの存在を前提とせずに構築した現在のジャーナリズムのしくみやしかけに対して、将来の電子ジャーナリズムは情報の量よりも質の保証をどうするかが、最大の問題点になる。(論文執筆者による要約)
    [ABST#1-17]
  • "電子図書館"[断章] 環境情報学部教授 澁川雅敏
    人類の記憶(知識・情報)を保持するために人間社会が堅持してきた書物という社会的メカニズムを内包し、それを現代に生きる個人個人の意識の中に伝達する社会的装置としての図書館がいま"書物"図書館から"ポリメディア"図書館へと発展した。ディジタル情報技術の進展は私たちにそれをさらに"エレクトロニックライブラリー"から"ディジタルライブラリー"へ、そして"ヴァーチャルライブラリー"への進化を予想させている。(論文執筆者による要約)
    [ABST#1-18]
  • ディジタルメディアとウェルネス 環境情報学部助教授 濱田庸子
    ディジタルメディアが、ウェルネス、特に医療に与えた影響について、プラス面、マイナス面を検討した。プラス面としては医療情報が誰にでも入手可能になること、診断や治療に応用可能なことがあげられた。マイナス面ではテクノストレスや対人関係の障害などがあり、今後パーソナリティー発達に影響が予測された。その対策として、健康なパーソナリティーを育てること、身体感覚を重視することなどを考察した。(論文執筆者による要約)
    [ABST#1-19]
第5部 大学論
  • ディジタルメディアと教育 環境情報学部教授 安村通晃
    ディジタル革命が進行しつつある今日、教育の場面では、ディジタル技術はどのように生かせるか、その現状と可能性について述べる。まず、電子文房具やプレゼンテーションの面についてディジタルの課題と可能性について述べる。「ディジタル万能主義」を排し、まとめとして教育の面での今後の研究の取り組み方を述べることとする。(論文執筆者による要約)
    [ABST#1-20]
  • 「マルチメディア外国語学習用ディジタル社会空間」構築の提案 総合政策学部教授 小林栄三郎
    ここでは、ネットワーク上のディジタル外国語学習教材として、当該外国語を国語とする社会の社会的・文化的規範・慣習・制度・価値基準を備えた、マルチメディア・バーチャルリアリティ社会空間の構築が提案されている。この仮装現実の社会空間では、学習者は自分の個人的・社会的属性をもつ登場人物を設定し、その人物のその社会空間での言動・生活を介して、当該の言語を学習するだけではなく、それぞれの状況・場に応じて適切な行為ができるために必要な、その社会的・文化的な規範・慣習・制度・価値基準をも学習してゆくことになる。(論文執筆者による要約)
    [ABST#1-21]
  • ヴァーチャル・ユニバーシティ実験 総合政策学部教授 鵜野公郎
    インターネット、マルチメディア、データベースを含む「知のメディア」の飛躍的な発展は「知のコンテンツ」を担う大学のあり方を大きく変えようとしている。ディジタルテクノロジーを駆使した大型実証研究プロジェクトを地球規模で展開することが可能になり、研究ノード機能の重要性が高まっている。技術的には実験段階から実用段階に至っているが、ヴァーチャル・ユニバーシティの定着には開発機能、費用分担、単位互換などの制度化が課題である。(論文執筆者による要約)
    [ABST#1-22]
  • SFCにおける研究戦略 政策・メディア研究科委員長 相磯秀夫
    1990年4月に開設された湘南藤沢キャンパス(SFC)の設立理念の一つとして、大学における先端研究遂行の重要性が掲げられている。その理念の実現のために、SFCではそれぞれの研究領域を越えた協調(コラボレーション)を土台とした教職員全員参加の共同研究と大学にとって健全な"大学・産業・政府"三者協調の研究開発体制の確立に努力してきた。一方、慶應義塾は21世紀の"ディジタル・ユニバーシティ"を標榜し、大学の教育・研究の大幅な改革に力を注いでいる。SFCはその試金石であるが、大学改革の推進力の一つは最先端の研究に取り組むことであると考えている。SFCは先端研究を中心に全てが展開しており、新しい大学の教育・研究のあり方に挑戦していると言ってよい。ここでは、SFCにおける研究開発に対する考え方とその取り組み方について述べることにする。(論文執筆者による要約)
    [ABST#1-23]




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