KEIO SFC JOURNAL - Vol.11 No.2 2011



CONTENTS
【特集:招待論文】
大学教育とジャーナリスティックな語り
石井 潔(静岡大学理事・副学長(教育・附属学校園担当))
大学教育の国際化とインターナショナルプログラムの展望−チュラロンコン大学コミュニケーションアーツ学部の事例から
望月 太郎(大阪大学大学教育実践センター教授)
近年の日本の留学生政策とSFCにおける日本語教育
平高 史也(慶應義塾大学総合政策学部教授)
アフリカコンゴ民主共和国でのアカデックス小学校建設・運営プロジェクトの実践
長谷部 葉子(慶應義塾大学環境情報学部准教授)
大学高等教育における学術交流活動の意義−アラブ人学生歓迎プログラム(ASP)10年の軌跡
奥田 敦(慶應義塾大学総合政策学部教授)
高等教育機関におけるキャリア教育の諸問題
花田 光世(慶應義塾大学総合政策学部教授)
宮地 夕紀子(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任講師)
森谷 一経(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程)
小山 健太(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程)
数学における高等教育
河添 健(慶應義塾大学総合政策学部教授)
【特集:研究論文】
空間共有を実現する多地点接続型遠隔授業環境の構築と運用
工藤 紀篤(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程)
片岡 広太郎(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任助教)
大川 恵子(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授)
中村 修(慶應義塾大学環境情報学部教授)
村井 純(慶應義塾大学環境情報学部教授)
【自由論題:研究論文】
MRIを利用した大脳の左右中心溝長の発達計測
岡 徳之(應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問))
吉野 加容子(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程)
加藤 俊徳(株式会社脳の学校 脳環境情報部門代表)
3テスラMRIを用いた海馬回旋の発達スペクトラムの形態評価
吉野 加容子(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程)
加藤 俊徳(株式会社脳の学校 脳環境研究部門代表)
再帰性概念における「異質な他者」−A.ギデンズとU.ベックのモダニティの再帰性理論の批判的検討を通じて
権 永詞(慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問))
長期記憶における因果関係構造−言語連想実験による検証
中村 美代子(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程)
森島 泰則(国際基督教大学教養学部上級准教授)
寺岡 丈博(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程/慶應義塾インフォメーションテクノロジーセンター本部助教)
岡本 潤(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程)
境界人格構造における自我機能の現れ−ロールシャッハ法と初期の面接から
森 さち子(慶應義塾大学総合政策学部准教授/医学部精神・神経科学教室兼担准教授)
松本 智子(慶應義塾大学SFC心身ウェルネスセンター カウンセラー/総合政策学部非常勤講師/医学部精神・神経科学教室共同研究員)
片貝 丈二(慶應義塾大学SFC心身ウェルネスセンター カウンセラー/医学部精神・神経科学教室共同研究員)
【書評】
『ソーシャル・ビジネス革命:世界の課題を解決する新たな経済システム』
−ムハマド・ユヌス 著、早川書房、2010年12月刊

評 岡部 光明(明治学院大学国際学部教授)
ABSTRACT
特集:招待論文
  • 大学教育とジャーナリスティックな語り
    石井 潔
    静岡大学理事・副学長(教育・附属学校園担当)

    1950年代後半以降の大学の急速な拡張に伴って、市井の「知識人」は大学に所属する「専門人」となり、専門分野の知識と我々にとっての「日々のこと=journal」とを結びつける「ジャーナリスティックな語り」は見失われ、自らの狭い専門分野の内部に閉じこもる「専門家主義」が支配的となった。学生たちが自らの「学び」を面白いと感じ、またその社会的意義を理解することができるようになるためには、学生も教員も、このような「専門家主義」を克服し、具体的なイメージを通して、それぞれの専門分野について語る能力を共有しなければならない。 本文を読む(PDF)11ページ/457KB/日本語
  • 大学教育の国際化とインターナショナルプログラムの展望−チュラロンコン大学コミュニケーションアーツ学部の事例から
    望月 太郎
    大阪大学大学教育実践センター教授

    英語で授業を実施するインターナショナルプログラムの設置が進められている。日本では、入学者の国内需要の増加が見込まれない競争的環境の中、多くの留学生を誘致することは大学にとって生き残りを賭けた死活問題である。他方、タイでは、日本とは対照的に、グローバル化する労働市場で即戦力となる英語力を持ったタイ人卒業生へのニーズの増大に応える仕方で多様なインターナショナルプログラムが大学に設けられている。文化、言語、カリキュラムは国際的な学習環境において鍵となる変数である。本稿は、筆者が教育の経験を得た、チュラロンコン大学コミュニケーションアーツ学部インターナショナルプログラムにおいて、それらの変数がインターナショナルプログラムの実施をどのように規定しているかを考察する。 本文を読む(PDF)12ページ/1.02B/日本語
  • 近年の日本の留学生政策とSFCにおける日本語教育
    平高 史也
    慶應義塾大学総合政策学部教授

    本稿では、まず近年の日本の留学生政策と日本語教育政策の問題点について論じる。次に、これまでのSFCにおける日本語教育を、(1)キャンパス開設以来行われている学部帰国生・留学生に対する科目、(2)大学院、環境情報学部の英語で履修する学生に対する科目、(3)学部3年次に編入してくるベトナムのハノイ工科大学生向けの科目の3つに分けて概観する。その際、授業以外の日本語教育関連のプロジェクトについても触れる。最後に、SFCの日本語教育の今後の課題と展望を、理念、システムの構築、アプローチの3つに分けて述べる。 本文を読む(PDF)12ページ/482KB/日本語
  • アフリカコンゴ民主共和国でのアカデックス小学校建設・運営プロジェクトの実践
    長谷部 葉子
    慶應義塾大学環境情報学部准教授

    アフリカコンゴ民主共和国でのアカデックス小学校建設・運営プロジェクトの2007年から現在に至るまでのフィールドワークに於いて「日本の自立支援」から「コンゴ×日本の協働」への移行と「コンゴのオーナーシップ」確立へと日本×コンゴの関係性が変容していった。その過程を異言語・異文化間理解を基盤とした日本×コンゴの意識変容・態度変容の視点から検証し、フィールドワークの意義を再考する。
  • 大学高等教育における学術交流活動の意義−アラブ人学生歓迎プログラム(ASP)10年の軌跡
    奥田 敦
    慶應義塾大学総合政策学部教授

    慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスでアラブ・イスラーム圏との学術交流の試みの一つとして奥田敦研究会の活動の一環として行われ、2011年に10回目を迎えた「アラブ人学生歓迎プログラム(アハラン・ワ・サハランプログラム(ASP))」を取り上げ、その10年間の軌跡を振り返りながら、プログラムの成長と深化をたどり、10年目を契機として活動の理念を確認し、今後を展望すると同時に、大学高等教育においてこうした学術交流活動が有する意義について考える。
    本文を読む(PDF)16ページ/722KB/日本語
  • 高等教育機関におけるキャリア教育の諸問題
    花田 光世
    慶應義塾大学総合政策学部教授
    宮地 夕紀子
    慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任講師
    森谷 一経
    慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程
    小山 健太
    慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程

    キャリア教育の重要性が高まる中、高等教育機関におけるキャリア教育の開発と実施は十分に展開されているとはいえない。高等教育機関では、2011年1月の中央教育審議会の答申、同年4月の大学設置基準の見直しなどにより、各大学は独自のキャリア教育の導入が要請されている。それに対し、大学生の就職難、卒業後の初期キャリアの課題、社会で必要とされる職務知識やスキルの変化などが顕在化しているにもかかわらず、各大学のキャリア教育の対応は遅れている。翻って、SFCでは1990年のキャンパス設置の際、既にキャリア教育の重要性が提示されていた。職業指導、就職指導という概念に加えて、ライフキャリアにおけるキャリア開発の重要性というビジョンをもとに、キャリアデベロップメント委員会が設立され、就職活動の支援を行ってきたのである。2011年4月の大学設置基準の見直しで提起された、社会的自立・職業的自立がすでに、ライフキャリアにおけるキャリア自律の実践というコンセプトとして広くキャンパスで提供される様々な教育に浸透していた。慶應義塾の建学の精神である、独立自尊が、キャリア教育の中で実践され、キャンパスの教育風土として確立されてきたのである。高等教育機関におけるキャリア教育は、現在必ずしも確立されているとはいえないが、SFCがこの分野で貢献できる可能性は大きいといえよう。 本文を読む(PDF)13ページ/1.05MB/英語
  • 数学における高等教育
    河添 健
    慶應義塾大学総合政策学部教授

    数学の高等教育について述べる。初等・中等教育の後が高等教育であり、よって大学や大学院などで教える数学ということになる。大学で教える数学教育といっても、大学自体の在り方が大きく様変わりしている。さらには後期中等教育、すなわち高校で行われている数学教育あたりからその目的が十分に達成されていない。このあたりから数学教育の全体が危機的な様相を呈している。この稿ではその現実を浮き彫りにするとともに新たな数学の高等教育の可能性について考えてみたい。 本文を読む(PDF)8ページ/872KB/日本語
特集:研究論文
  • 空間共有を実現する多地点接続型遠隔授業環境の構築と運用
    工藤 紀篤
    慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程
    片岡 広太郎
    慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任助教
    大川 恵子
    慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授
    中村 修
    慶應義塾大学環境情報学部教授
    村井 純
    慶應義塾大学環境情報学部教授

    大学間連携を活用した人材育成が注目されている。複数大学間の遠隔授業により、大学間で分散協調型の教育プログラムが実現する。しかし既存の大学間連携同士を相互接続する、大規模大学間連携における多地点接続型遠隔授業の実現には多くの問題が存在する。本研究では問題の分析を行うとともに実際に環境を構築し慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスを中心とする実際の大学間連携プログラムにおいて運用している。本環境は、これまでに最大7地点間を接続する500回以上の授業で活用される遠隔授業基盤であり、今後も大規模大学間連携での利用が期待される。
自由論題:研究論文
  • MRIを利用した大脳の左右中心溝長の発達計測
    岡 徳之
    應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)
    吉野 加容子
    慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程
    加藤 俊徳
    株式会社脳の学校 脳環境情報部門代表

    ヒトの脳構造の発達変化を明らかにする研究がMRIを用いて行われるようになった。運動機能は生後早期からの第一次運動野(M1)の発達に支えられている。M1の発達を反映する左右中心溝の長さ(中心溝長)は利き手に関与しているとの報告から、小児群と成人群を比較し左右中心溝長の発達変化を調べた。中心溝長は、小児群でのみ有意な左右非対称を示した。また、男性で中心溝長に有意な左右非対称を示した。中心溝長は、生活年齢や性別により利き手側よりも非利き手側の運動野の成長が促され、左右対称に近づくことが示唆された。 本文を読む(PDF)8ページ/957KB/日本語
  • 3テスラMRIを用いた海馬回旋の発達スペクトラムの形態評価
    吉野 加容子
    慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程
    加藤 俊徳
    株式会社脳の学校 脳環境研究部門代表

    海馬は海馬溝を巻き込みながら胎児期から生後に急速に発達する脳の器官である。この海馬回旋のプロセスが完了せず、その形状が遺残した海馬回旋遅滞は、てんかんや広汎性発達障害との関連が指摘されている。海馬構造を明瞭に描出できる高磁場3テスラMRIを使用し、成人の海馬とその周辺の形態特徴を明らかにした。従来の海馬回旋角を含む11指標で、海馬回旋が同側海馬周囲の形態発達に影響していることが示された。小児だけでなく、成人にも認められた海馬回旋の発達スペクトラムは、11の定量指標で評価できることが示唆された。 本文を読む(PDF)14ページ/1.91MB/日本語
  • 再帰性概念における「異質な他者」−A.ギデンズとU.ベックのモダニティの再帰性理論の批判的検討を通じて
    権 永詞
    慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)

    1980年代以降の個人化や脱伝統化を背景に、ギデンズはあらゆる外的な規範を失った個人の自立を積極的に評価して新しい社会秩序を構想した。だが、ギデンズの想定する個人は他者を計算可能なリスク要因か計算不能な敵に二分してしまうことで、常に他者との全面的な暴力的衝突の危険を内在させている。これに対して、ベックは自己危害という再帰的近代に特有の不確実性が個人の自立を不安定にすると論じるが、ここにはギデンズとは異なる形での「異質な他者」との関係性のあり方が示唆されている。両者の議論を比較することで、自他の全面的衝突の危機は自己準拠的な「完結する自己」の概念にこそ潜んでいることがわかる。モダニティの再帰性理論は、これを回避するために、「異質な他者」との邂逅の可能性を内在させた「未完の自己」という概念を導出する。
  • 長期記憶における因果関係構造−言語連想実験による検証
    中村 美代子
    慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程
    森島 泰則
    国際基督教大学教養学部上級准教授
    寺岡 丈博
    慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程
    慶應義塾インフォメーションテクノロジーセンター本部助教
    岡本 潤
    慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程

    長期記憶の因果関係構造を、言語自由連想を用いた2つの実験により検証した。参加者が刺激となるイベントを表わす文に対して自由な連想を挙げる実験1では実験参加者が連想した総数の内、約半数が原因や理由に関する連想であると分類された。次に、この分類が客観性を持つかどうか、別の参加者による実験2で、同じイベント文に対して「原因や理由」を敢えて連想するよう求めた。実験2の応答と実験1の応答との間に高い相関が見られ、分類の客観性が確かめられた。これらの結果により、人間の知識構造内でイベントは因果関係をもって結合されていると考えることができる。
  • 境界人格構造における自我機能の現れ−ロールシャッハ法と初期の面接から
    森 さち子
    慶應義塾大学総合政策学部准教授
    医学部精神・神経科学教室兼担准教授
    松本 智子
    慶應義塾大学SFC心身ウェルネスセンター カウンセラー
    総合政策学部非常勤講師
    医学部精神・神経科学教室共同研究員
    片貝 丈二
    慶應義塾大学SFC心身ウェルネスセンター カウンセラー
    医学部精神・神経科学教室共同研究員

    ロールシャッハ法は、精神分析的心理療法中に展開するクライエントの自我機能のあり方、すなわち退行や防衛のあり方、現実検討力の働き方の予測に役立つという観点に基づいて、臨床診断上、境界人格構造とアセスメントされた20代の症例を対象に、ロールシャッハ法と心理療法の初期10回の面接を比較検討した。その結果、ロールシャッハ法上には現れ易い、対象像のスプリッティングや衝動統制の弱さ等、境界人格構造に特徴的な現象が、初期の心理療法場面では直接現れず、むしろ面接の外の体験として語られる現象を見出した。 本文を読む(PDF)12ページ/652KB/日本語
書評
  • 『ソーシャル・ビジネス革命:世界の課題を解決する新たな経済システム』
    −ムハマド・ユヌス 著、早川書房、2010年12月刊


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